推しに告白(嘘)されまして。
2.告白
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千晴によって連れて来られた場所は、風紀委員室だった。
誰もいない風紀委員室には基本鍵がかかっており、風紀委員のみしか開けられないようになっている。
風紀委員長ではなくなり、もう半年。
私は久しぶりに風紀委員室へと足を踏み入れていた。
何故、風紀委員でもなんでもない千晴がここの鍵を持ち、開けられたのかは、この際目をつぶろう。
千晴のことだ。
おそらく持ち前のマイペース&強引さで、鍵を入手したのだろう。
鍵を持っていた誰かに同情してしまう。
小さな教室のような風紀委員室の奥には、普通の教室と同じように窓が並んでいる。
その窓から見える空は清々しいほど青く、校庭にはたくさんの生徒たちが小さな輪になって、まだ別れを惜しんでいた。
窓いっぱいに広がる景色に懐かしさを感じる。
風紀委員であった約2年半、私はいつもここの景色を見てきた。
それも今日で最後だ。
感傷的になりながらも、ゆっくりと懐かしい風紀委員室を歩く。
一歩、また一歩と進んでいくうちに、つい昨日までここにいたかのような感覚に陥った。
そして気がつけば、私は窓際にいた。
そのまま無意識にゆっくりと窓に手を伸ばしたーーその時。
後ろから私に大きな影が落ちた。
「先輩」
いつの間にか私のすぐ後ろにいた千晴が、柔らかい声音で私を呼ぶ。
その声に私の視線は自然と窓から千晴へと動いた。
2年間、私を散々悩ませてきた校則違反の金髪が、まず目に入る。
ふわふわの柔らかそうなそれは、太陽の光が当たらない室内にいながらも、私にはキラキラと輝いて見えた。
そこから覗く顔は、まるで精巧に作られた人形のように一切の欠点がなく、美しい。
通い慣れた教室に、いつものように千晴はいた。