推しに告白(嘘)されまして。
「…うん」
気がつけば私は真剣な表情で、頬を真っ赤に染め、ゆっくりと千晴に頷いていた。
「…っ!」
私の返事に千晴が目を丸くさせる。
驚きと嬉しさと焦がれるような想いと。
その瞳にはいろいろな感情がぐちゃぐちゃに混ざり合っているが、その中でも喜びが一番あるように見える。
ほんの少しだけ固まっていた千晴は、私の言葉を噛み締めるようにまぶたを閉じると、すぐに嬉しそうに口元を緩めた。
「先輩、好き」
「…うん」
「先輩も俺のこと好き?」
「…うん、好き」
千晴と見つめ合い、やっと柔らかく笑い合う。
お互いの気持ちが確かであると確認すると、千晴はゆっくりと私との距離を詰めた。
私に落ちてくる千晴の影。
その影は千晴が近づくたびに濃くなり、私を染めていく。
綺麗な千晴の鼻が私に触れるところまで来た、その時。
「柚子ー!」
窓の外から誰かが私の名前を呼んだ。
いや、誰かではない。
このとんでもないイケボは…。