推しに告白(嘘)されまして。
「これならいいでしょ?」
自信満々にそう問いかけた千晴に、私は思わず表情を緩ませた。
全く、千晴は…。
マイペースで自分勝手で強引で。
本当、いつもなんでも思い通りだ。
だが、そんな千晴の一面でさえも愛おしくて思える。
どこか悔しさを感じながらも、頷くと、千晴は嬉しそうに笑った。
そしてゆっくりと、私に顔を近づけた。
こちらを見つめる伏せられた瞳から愛おしいという感情が溢れている。
言われなくても伝わる千晴の感情に、どんどん心臓は加速した。
うるさくて、うるさくて、仕方のない鼓動が体中に響く。
そこからさらに距離が近づき、私は耐えられず、ギュッとまぶたを閉じた。
鼻をかすめる千晴の甘い香りに、甘い吐息。
すぐ傍まで千晴を感じた、その時。
ゆっくりと私の唇に千晴の唇が重なった。
柔らかくて暖かい。
一瞬だけ触れたそれは、名残惜しそうにまたゆっくりと離れていく。
「ずっと一緒にいてね、先輩。俺には先輩だけだから」
「うん。もちろん」
思い出の詰まった教室で、私たちは向かい合い、笑った。
確かにある幸せな未来に想いを馳せて。
【推しに告白(嘘)されまして。end】