推しに告白(嘘)されまして。

2.VIPなデート




*****



私が千晴とメルヘンランドに行くと言ってから、まだ1週間も経っていない。
だが、気がつけば、その話をした週末、土曜日には千晴と共にメルヘンランドに行くことが決まっていた。


『じゃあ土曜日の10時に先輩の家に迎えに行くから』


と、特に何か決めるわけでもなく、ただ一方的に千晴にそう言われて迎えた、約束の土曜日。

私は千晴に言われた通り、家で私を迎えにくる予定の千晴を待っていた。

ここからメルヘンランドまでは車で約1時間ほどだ。
当然、学生である私たちの交通手段に車などなく、行くなら電車かバスでだ。
どちらで行ってもいいのだが、まあ、電車で行くのが無難だろう。
私たちはまだあちらまで行く交通手段でさえもきちんと決めていなかった。
しかし、千晴がうちに来てからそれを決めても決して遅くはないと考え、私は何も決まっていない現状に何も思っていなかった。


約束の時間、10時になった頃。
ピンポーンと家のチャイムが鳴り、「あらぁ。どうもぉ」という、お母さんの明るい声が聞こえてきた。

おそらく千晴が来たのだろう。

そう判断した私は鞄の中身をざっと最終確認すると、階段へと向かった。
我が家は階段を降りてすぐそこに玄関がある構造だ。



「とっても美人さんねぇ、まさか柚子の彼氏さん?」



階段を降りている途中で、そんなことを聞くお母さんの後ろ姿と、お母さんと向き合う千晴の姿が見える。

違う違う。彼氏じゃない。
それ後輩。

お母さんの千晴への質問に思わず私は心の中でツッコミを入れた。



「はい、彼氏です」

「…っ!?」



だが、千晴は私の心の中のツッコミとは裏腹に、さも当然のようにお母さんに、自分が彼氏だと頷いた。



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