推しに告白(嘘)されまして。
「違う違う違う!」
千晴の衝撃の大嘘に慌てて階段を駆け降りる。
そんな私を見てお母さんは「まあ、照れちゃって〜」とどこか楽しそうにしていた。
全く私の言葉など信じていない様子だ。
照れていない!
訂正しているだけなのに!
「先輩、おはよう」
慌てて降りてきた私に、混乱の元凶である千晴が平然と微笑む。
千晴の今日の格好は黒の大きめの半袖シャツに黒のスラックスと全身黒コーデだ。
制服姿の千晴しか見たことがなかったので、私服姿の千晴はどこか新鮮で、とても大人っぽかった。
ちなみに私の今日の格好は、動きやすいワイドデニムパンツに肩に大きなフリルのある白のキャミだ。
髪はいつもとは違いおろしていた。
「可愛いね、先輩」
「ん?そう?ありがと」
千晴にいろいろと言いたいが、とりあえず、千晴の挨拶ついでの褒め言葉を軽く受け取り、「いってらっしゃぁい」と言うお母さんの明るい声を背に玄関から出る。
すると普通の住宅街の道路の路肩に、何故かとんでもなく立派なリムジンが停まっていた。
随分この普通の住宅街に似つかわしくない車である。
一体誰かこんなところに停めたのだろう。
そう思っていると、私たちがリムジンに近づいたタイミングで突然リムジンの扉がひとりでに開いた。
「先輩、乗って」
「え。…え?」
千晴に乗るように促されたので、訳のわからないままリムジンに乗り、とりあえず座る。
気がつけば千晴もこのリムジンに乗っており、私の横に当然のように腰を下ろしてきた。