推しに告白(嘘)されまして。
「先輩、次ここ?」
「へ?あ、うん」
あー!やってしまった!
つい先ほどまでの流れのまま、千晴の問いかけに頷いてしまったことに心の中で頭を抱える。
だが、頷いてしまった以上、「やっぱりやめよう」とは言えない。
後輩である千晴に先輩である私の情けない姿は見せたくない。
「い、行こ行こ。行ってやろう」
なので、私は自身を鼓舞して、お化け屋敷の方へと足を踏み出した。
そんな私の横で千晴が「先輩怖くないの?ここ」と首を傾げながら聞いてくる。
「…まあ」
「ふーん」
本当は力強く「全然怖くない」と答えたいところだったが、歯切れの悪い返事となってしまった私を、千晴は何故か黙ってじっと見つめてきた。
な、何?やっぱり、嘘だってわかる?
「俺、実はこういうのちょっと苦手なんだよね。だから先輩にくっついてい?」
まさかの千晴からの言葉に口をあんぐり開けてしまう。
私よりもずっと大きい男なのに少しだけ眉を下げる千晴に何故か庇護欲を煽られた。
何故か私が守らねばと思ってしまう。
数十人相手に喧嘩をし、病院送りにしたって、学校でよく聞く千晴についての悪い噂で言われているほどの男なのに。絶対守られる対象ではないのに。