推しに告白(嘘)されまして。
「わ、わかった。来なさい」
私は何を血迷ったのか、千晴に右腕を差し出し、私にくっつくことを許可してしまった。
守って欲しいのはむしろこっちだというのに。
千晴はそんな私を見て嬉しそうに笑うと、私の右手に抱きついてきた。
内心怖いが気丈に振る舞う私の右腕にお化け屋敷が苦手らしい千晴。
あまりいい状況ではないが、私は腹を括った。
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お化け屋敷に入った後、私はずっと私ではないお化け屋敷など怖くない強い女になりきっていた。
お化け役の人が私を脅かそうと物陰から出るたびに、そいつを睨み、凄み、威嚇もした。
たまに逆にお化け役の人が私にビビり、「ひ、ひぃぃ」と言って尻餅をついたり、「ご、ごめんなさいぃぃ!」と叫び、逃げたりもしたが、私は強い女であることをやめなかった。
そうでなければ正気を保っていられないからだ。
ただずっと強い女でい続けると、ちょっとした余裕もでき、ふと、その余裕の中で、私の右腕を抱き続ける千晴の存在に意識がいった。
先ほどからずっと私の右腕を抱きしめ、歩く千晴の体の硬さに、千晴が男なのだと感じる。
回されている腕も私のものとは違い、しっかりしており、私よりもずっと力強い。抱きしめられていることによって、近づいた距離からほのかに感じる千晴の香りも花のような香りで、嫌いなものではなかった。
いつもよりも近くに感じる千晴に、急に異性として意識してしまい、どぎまぎしてしまう。
い、いけない。
私は先輩として、怖がる後輩を守る義務があって…。