推しに告白(嘘)されまして。
3.デートの終わり
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「…」
疲れた。
お化け屋敷からやっと出た私はもう満身創痍で、千晴に寄りかかっていた。
あんなもの入らなければよかった。何も楽しくなかった。
「先輩、大丈夫?」
ぐったりとしている私の様子を伺う千晴は私とは違い、どこか満足げだ。
苦手だと言っていたわりには、ずっと余裕があり、私を抱き寄せたまま、何度も何度も庇ってくれた。
どうなっているんだ。本当は苦手ではない?
「きゃー!」
千晴に疑惑の視線を向け始めたところで、その声は突然聞こえてきた。
女性の甲高い叫び声に周囲の人々はざわつき始める。
声の方へと視線を向ければ、そこには明らかに女性ものの鞄を抱えて走る、全身黒ジャージの30代くらいの男がこちらに向かって走ってきていた。
状況から見ておそらくアイツが女性から鞄を奪ったのだろう。
…全く。せっかくのメルヘンランドなのに。
全員の楽しい気持ちに水を差す行為、許せない。
「…はぁ」
ひったくり犯を捕まえる為に、大きなため息を吐き、千晴から離れる。
それからひったくり犯を睨みつけて、腕をあげようとした。