推しに告白(嘘)されまして。
「先輩、下がって」
しかし、そんな私の前に千晴が現れ、左手で私を制止した。
あのひったくり犯から私を守ろうとしての行為なのだろう。
だが、私にはそんなもの必要ない。
お化け屋敷ではぜひ私を守ってもらいたいが。
「千晴、大丈夫」
私を庇うように立った千晴を避け、こちらに迫ってくるひったくり犯をもう一度睨む。
前に現れた私を見て、ひったくり犯は「退けや!」とすごい形相で叫んできたが、私は構わず右腕を肩の高さまで上げ、少し曲げて構えた。
先ほどまで満身創痍だったはずなのに、体の奥底から力がみなぎる。
私の中の正義感がそうさせる。
「止まりなさい!」
そして私の叫びと共に振り抜かれた右腕は、見事にひったくり犯の首へと当たり、ひったくり犯はその勢いのまま、地面へと仰向きに叩きつけられた。
ラリアット成功だ。
「…ゔっ」
私からラリアットを喰らったひったくり犯は、うめき声を漏らしながらも、表情を歪めていた。
とても苦しそうだが、犯罪に手を染めたやつに慈悲など必要ないだろう。
「返しなさい、それ」
「…あ、は、はい」
私に凄まれたひったくり犯は、半泣きで何度も頷き、鞄をこちらに差し出す。
これで万事解決だ。
この一連の流れを見ていた千晴は最初そこ、唖然としていたが、すぐに「あはははっ。さすが先輩っ」と大笑いし始め、一緒にひったくり犯の対応をしてくれたのであった。