推しに告白(嘘)されまして。
「アンタがあんな顔してたからね。注意くらいはしようと思って」
有名人だからと、目立つからと、何でも言っていいわけではない。あることないこと言うのは間違っている。
私の腕を未だに掴んだまま離さない千晴は私の言葉を聞いて少し考えてから口を開いた。
「アイツら先輩のこと〝鉄子〟て言うから。それであんな顔してた」
「は?」
あまり感情を感じさせない表情でそう言った千晴に私は首を傾げる。
私が〝鉄子〟て言われることはもう定着していることだし、千晴が気にするようなことではないんだけど…。
「先輩にはちゃんと柚子っていう可愛い名前があるのに」
少し拗ねたようにぷくっと小さく頬を膨らませる千晴にどんどん顔の温度が上昇していく。
真っ赤だ。私の顔は今、とんでもなく赤いことだろう。
「…柚子先輩、かわいい」
そんな私を見て千晴は私の耳元に自身の唇を寄せてそんなことを囁いてきた。
「ち、近い!耳元で言うな!耳元で!」
あまりにも近すぎる千晴にバクバクとうるさい心臓を誤魔化すように、ぐいーっと千晴の顔を右手で押す。
すると、その手を千晴に掴まれて、千晴はその手のひらにまさかのキスをしてきた。
「耳まで真っ赤だね」
と、色っぽく微笑む千晴に私は左手で握り拳を作り、千晴のみぞおちを思いっきり殴ったのであった。