推しに告白(嘘)されまして。

3.推しに告白される




***** 



その日の昼休み。
私は今日も数人の生徒たちで賑わう教室の窓際で、中学からの親友であり、同じクラスの浪川雪乃(なみかわゆきの)と共に昼食を食べていた。
そして昨日あったとんでもない出来事をやっと雪乃に伝えることができていた。



「推しが私に告白してくれるんだよっ」



できれば興奮をそのままに大きな声で発表したい事実なのだが、そんなことをしてしまっては〝鉄子に玉砕大作戦!〟が周りに知れ渡り、作戦を実行してもらえないかもしれないので、興奮気味に何とか小声で雪乃にそう言う。
すると、雪乃は「楽しいねぇ」とどうでも良さそうに笑っていた。



「王子もいいけどさ、アンタには千晴くんがいるじゃん」



嬉しそうな私に突然そんなことを雪乃が言う。

何故、急に千晴の話になるんだ?

雪乃の言いたいことがよく分からず首を傾げていると、そんな私を見て雪乃は呆れたように笑った。



「千晴くん、絶対柚子のこと好きじゃん」

「は?何言ってるの?ないない。それはない」



雪乃のぶっ飛びすぎている冗談に思わず、こちらも呆れて笑ってしまう。

さては私を笑わそうとしているな?



「いやあるでしょ?あれはどう見てもそうでしょ?アンタにだけ笑って、アンタにだけ懐いて、アンタにだけされるがままなんだよ?」

「あのね、雪乃。あれはね、今まで会ったことのないタイプの私を面白がっているだけなんだよ。みんな千晴が怖くて近寄れないでしょ?でも私は近寄れるし、世話まで不本意だけど焼いているじゃん?千晴にとって私は第二のお母ちゃんかお姉ちゃんみたいな存在なんだよ?」

「…本気で言ってる?」

「そっちこそまさか本気で?」



互いに互いを信じられないものでも見るような目で見る。
あの恋愛ごとにはめっぽう強い雪乃がまさか冗談ではなく、本気で千晴が私のことを好きだと思っていたなんて。

長い腰まである真っ直ぐな黒髪にまるでアイドルのような可愛らしい顔。制服もきちんと着ており、風紀委員長の私が指摘する箇所なんてもちろんない。
そんな浪川雪乃はご覧の通り、清純派美少女の見た目だが、中身は全く違った。

とんでもない小悪魔で男遊びが激しいなのだ。もうそれも相当。


< 7 / 309 >

この作品をシェア

pagetop