推しに告白(嘘)されまして。
4.同じにしたい side千晴
side千晴
太陽が沈み、パーク内が電飾の海に包まれる。
その中で、俺の隣を歩く小さな存在に、じんわりと心が暖かくなった。
意志の強そうな猫目に、小さな口。
綺麗だが、可愛い要素もある、美人な柚子先輩の横顔はいつまでも見ていられる。
先輩を見て俺は改めて、好きだな、と思った。
複数の事業を展開する、日本有数のグループ、華守グループの跡取り息子である俺は、生まれた時から特別で、何をしても許される存在だった。
周りの大人たちによって勝手に決められたつまらない道に、俺に頭が上がらない全ての人間。
俺を取り巻く全てがつまらない。
そう思って生きてきたが、先輩と出会って全てが変わった。
先輩は時に強く、時に優しい人だ。
それは誰に対しても同じで、俺に対してもそうだった。
そんな先輩が俺は好きだ。
今日の先輩も本当によかった。
強いところも優しいところも見れたし、何よりも私服の先輩はいつも見る制服の先輩とはまた雰囲気が違い、カジュアルでとても可愛いかった。
だが、そんな大好きな先輩に〝彼氏〟ができてしまった。その枠はいずれ俺のものになるはずだったのに。
最初、先輩に彼氏ができたと知った時、はらわたが煮えくり返った。
心が、体が、不快と怒りに支配され、どうしようもない不快感が俺を襲った。
しかし、今はもう落ち着いている。
何故なら先輩が彼氏に選んだ相手が、ただの先輩の推しだったからだ。
先輩は別にアイツのことを異性として好きではない。
ただの推しとして推しているだけだ。
先輩からアイツの話を聞くたびに、そこに俺と同じ熱を一切感じなかったので、すぐにそうだとわかった。
まあ、だからといって、先輩の口から他の男の話なんて聞きたくないが。