推しに告白(嘘)されまして。





「ところで鉄崎さん」

「…ん?」



嬉しくて嬉しくてついニコニコしていると、そんな私の顔を沢村くんが覗き込んできた。

こちらを伺うように少しだけ上目遣いで私を見る推しの破壊力は相変わらずだ。
死人が出てしまうぞ。



「今日からテスト週間でしょ?部活も委員会活動も禁止だからいつもと帰る時間違うけど、一緒に帰らない?」

「うん、もちろ…「せーんぱい」



心では沢村くんの魅力にやられながらも、表では平静を装い、沢村くんの誘いに当然頷こうとしたその時、私の声を突然現れた千晴が遮った。



「おはよ、先輩」



そして何故かそのまま私を後ろから抱きしめてきた。
生徒たちの視線が一斉にこちらに注がれている気がする。

…何だ、これ。



「…おはよう、千晴。離してくれない?」

「俺のお願い聞いてくれたら離すよ」

「…お願いぃ?」



気怠げな千晴の声に眉間にシワを寄せる。
一体お願いとは何なのか。



「うん。俺、今回のテストヤバそうでさ。だから先輩に勉強教えてもらいたいんだよね。ダメ?」

「何だ、そんなこと?」



未だに私を自身の腕の中へと閉じ込め続ける千晴に、私は思わず苦笑する。
お願いだと言うからもっと難しいものでも言われるのかと、身構えてしまったではないか。




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