推しに告白(嘘)されまして。
「勉強くらいいくらでも教えるよ。はい、わかったら離す」
千晴のお願いをさっさと聞き入れ、私は自分を離すようにと、後ろを振り向き、グッと千晴の胸を押す。
だが、何故か千晴は私を離そうとせず、「もうちょっとだけ」と、私の頭に自分の頭をぐりぐりと押し付けてきた。千晴のせいで私の綺麗な一つ結びがボサボサだ。
「やめろバカ!髪がボサボサになっちゃうじゃん!」
「そしたら俺がまた結んであげる」
「そういう問題じゃない!」
先ほどよりももっと力を入れて千晴の胸を押すのだが、びくともせず、私は千晴にされるがままで。
力では敵わないと思い、私は一度千晴から逃れることを諦め、どうすれば自由になれるのか考えることにした。
やはりここはみぞおちに一発私の肘を喰らわせるしか…。
「嫌がってるだろ、離れろよ」
今まさに千晴のみぞおちを狙いかけたところで、沢村くんがどこか面白くなさそうに私たちを見て、千晴の肩を掴む。
「は?何、お前?」
「鉄崎さんの彼氏だけど」
「…」
「…」
それから2人は、私を挟んで、千晴がにこやかに、沢村くんが怖い顔で、静かに互いを睨んだ。
間に挟まれた私はとんでもない空気に1人晒される。
…居心地が悪すぎる。
「…千晴、私を離しなさい。あと沢村くんを睨むな」
もう我慢の限界だと、できるだけ怖い顔で千晴の頬を掴んで横に引っ張る。
私の推しを睨むだなんて言語道断。許されるものではない。
私に頬を引っ張られた千晴は何故か嬉しそうに「はぁい」と間の抜けた返事をし、やっと私から離れた。