推しに告白(嘘)されまして。




「先輩、迎えに来たよ」

「はいはい。全く。邪魔になってるよ。そこ」

「邪魔?何で?」



私に呆れられながらも注意された千晴が不思議そうに私を見る。
何故、自分が邪魔になっているのか、全くわからないといった様子だ。

…逆に何故、自分が邪魔になっていると思えないのか知りたい。



「こんなに大きい奴が出入り口塞いでたら通れないでしょ」

「人が来たら避けるけど」

「そういう問題じゃない。みんなアンタが怖いの」



私にそこまで説明され、千晴はどこか不服そうに急に黙る。
それからほんの少しだけ間を置いて、伺うように私を見た。



「先輩も俺のこと怖い?」



先ほどの柔らかい笑みを消し、私の本心を探るように、こちらをまっすぐと見つめる千晴。
私よりも全然大きいのに、まるで小さな子どものようにこちらを見る千晴に、何を言っているんだ、と私は鼻で笑った。



「怖いわけないでしょ?私は千晴が邪魔なとこにいたら、ちゃんと邪魔って言うから」



私は泣く子も黙る、この学校の風紀委員長なのだ。
一生徒のことを怖いだなんて思うわけがない。
そもそも千晴は素行が悪く、見た目が派手なだけで、怖いやつではない。
私を害そうとしてきたことなんてもちろんないし、もし仮に千晴が私を害そうとするものなら、あらゆる手段で対抗するつもりだ。

私は強いのだ。千晴くらいどうとでもなる。

私からの答えに千晴は「やっぱり、先輩、最高」と何故かとても嬉しそうに笑っていた。

…よくわからないやつ。当然のことを言っただけなのに、何がそんなに嬉しいのだろうか。



< 77 / 319 >

この作品をシェア

pagetop