推しに告白(嘘)されまして。
「先輩、迎えに来たよ」
「はいはい。全く。邪魔になってるよ。そこ」
「邪魔?何で?」
私に呆れられながらも注意された千晴が不思議そうに私を見る。
何故、自分が邪魔になっているのか、全くわからないといった様子だ。
…逆に何故、自分が邪魔になっていると思えないのか知りたい。
「こんなに大きい奴が出入り口塞いでたら通れないでしょ」
「人が来たら避けるけど」
「そういう問題じゃない。みんなアンタが怖いの」
私にそこまで説明され、千晴はどこか不服そうに急に黙る。
それからほんの少しだけ間を置いて、伺うように私を見た。
「先輩も俺のこと怖い?」
先ほどの柔らかい笑みを消し、私の本心を探るように、こちらをまっすぐと見つめる千晴。
私よりも全然大きいのに、まるで小さな子どものようにこちらを見る千晴に、何を言っているんだ、と私は鼻で笑った。
「怖いわけないでしょ?私は千晴が邪魔なとこにいたら、ちゃんと邪魔って言うから」
私は泣く子も黙る、この学校の風紀委員長なのだ。
一生徒のことを怖いだなんて思うわけがない。
そもそも千晴は素行が悪く、見た目が派手なだけで、怖いやつではない。
私を害そうとしてきたことなんてもちろんないし、もし仮に千晴が私を害そうとするものなら、あらゆる手段で対抗するつもりだ。
私は強いのだ。千晴くらいどうとでもなる。
私からの答えに千晴は「やっぱり、先輩、最高」と何故かとても嬉しそうに笑っていた。
…よくわからないやつ。当然のことを言っただけなのに、何がそんなに嬉しいのだろうか。