推しに告白(嘘)されまして。
「これね。これはね、まず公式を使う問題なんだけど…」
千晴が指差した問題の解説を私はテキストを見ながら早速始める。
それからしばらく話すこと数分。
何となく千晴のことを見てみると、テキストではなく、私をじっと見つめる千晴と何故かバチっと目が合った。
「…聞いてた?」
こちらを見る千晴に、私は静かな声で問い詰める。
千晴は私の問いに、きょとんとした顔をして、少し黙った後、ゆっくりと口を開いた。
「ごめん、聞いてなかった」
「はぁ?」
全く悪びれることなく、平然としている千晴につい眉間にシワが寄る。
一体何のために勉強会をしていると思っているんだ。
千晴がこんなではダメではないか。
「今回のテストやばいんでしょ?だから勉強会してるんだよね?ちゃんと聞いてないと意味ないよ?」
「ごめん、先輩。でも先輩が可愛すぎることも悪いと思う」
「は?私が?」
「うん。先輩が可愛すぎて話全然入ってこない」
「…」
怒る私にあっけらかんと答え続ける千晴に頭が痛くなってくる。
私をおだてれば自分の思い通りになると思っているのなら大間違いだ。
「…はぁ。そんなとこ言っても許さないからね。集中しなさい」
千晴の言動に呆れながらも、目の前でへらりと笑う千晴の頭を軽く叩くと、千晴の表情は何故か不満そうなものへと変わった。
その顔がしたいのは私の方である。