推しに告白(嘘)されまして。




「な、な、な、何すんの!」



あまりの衝撃にそう叫んだのと、ガターンッと勢いよく席から立ち、千晴の手を振り払ったのはほぼ同時で。



「どうしたの?」



さらにそのタイミングで私の推し、沢村くんまでも不思議そうに私たちの元に現れたので、私のキャパシティがついに悲鳴をあげた。

な、何てタイミング!



「あ、さ、沢村くん、こ、これ、は…」



真っ赤な顔のまま、私は何とか状況を説明しようとする。
…が、いろいろなことが重なりすぎて、軽くパニックになっている為、上手く言葉が出てこない。

千晴に何故か手の甲にキスされるは、舐められるは、突然推しが現れるはで、もう私の頭の中はしっちゃかめっちゃかだ。
私の様子を見ていたこのパニックの元凶、千晴は、私が上手く説明し始めるよりも早く楽しそうに口を開いた。



「そんなに気になるなら詳しく教えてあげるよ。先輩はね、俺と指を絡ませて…」

「千晴、ストップ!」



本当に楽しそうに先ほどのことを詳しく話し始めようとした千晴を、私は大声で制する。
手の甲にキスされた上に舐められたなんて、とてもじゃないが、沢村くんには言えない。
恥ずかしすぎる。



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