推しに告白(嘘)されまして。
「俺も先輩のおかげで勉強捗ったよ?明日もお願いね、先輩」
気怠げにだが、どこか満足げにこちらに声をかけてきたのは、千晴だ。
千晴も外見だけは非常に美しく、美人なので、夕日を浴びる千晴は、とてもキラキラと輝いていた。
何も言わず、何もせず、ただ黙って立っていれば、その美貌に人が嫌というほど集まるだろうに。
そうならないのは普段の素行のおかげなのだろう。
結果、友達がゼロで、千晴には私しかいない。
素行は悪いが、根は悪い奴ではないので、友達の1人くらいできて欲しいものだが。
「はいはい。明日も頑張るよ」
「うん」
残念美人な千晴に呆れながらも返事をすると、千晴はそんな私に嬉しそうに笑った。
他愛のない会話をしながらも、校門まであっという間に着いた私たちは、ここで千晴と別れることになった。
沢村くんと私は電車通学で、千晴は違うからだ。
いつもここで私は千晴と別れていた。
「…千晴、それじゃあ」
校門から出て、千晴にいつものように別れの挨拶をして、軽く手を挙げる。
だが、千晴はそんな私を不思議そうに見て、私の隣に居続けた。
何故か私の傍から離れず、共に街の中を歩き出す。
「え、千晴?」
千晴の予想外の行動に戸惑っていると、千晴は私に柔らかく笑った。
「俺、今日は電車なの」
「…へ、あ、そう」
どこか嬉しそうな千晴に面食らって、適当な返事をしてしまう。
まさか千晴まで電車で帰るとは夢にも思っていなかったのだ。
普段の千晴は徒歩だったので、てっきり徒歩圏内に千晴の家があるのだと思っていた。
それが実は電車を使わなければならないなんて…。
いや、単純に用事があってどこかに行くから電車を使うとか?
いやいや、でも、今日〝は〟電車、と言っているので、やっぱり家に帰ろうとしているよね?