推しに告白(嘘)されまして。
「お、おま、おま、お前…」
そんな空気の中、やっと口を開いてくれたのは隆太だった。
「ま、まさか、鉄子が、す、好きな訳?」
今にも倒れそうな顔色で、隆太は口をぱくぱくさせ、俺を指差す。
その指先は心なしか震えているように見えた。
「…好き?」
隆太の言葉に少しだけ胸がざわついた。
正直、まだ誰かを好きになったことがないので、隆太の指摘が正しいのかわからない。
鉄崎さんへ好意があるのは確かなのだが、それが恋だと確信を持つことはできない。
ただ…
「好きかどうかはよくわからないけど、彼女なんだし、大切にしたいとは思ってるよ」
これが俺の今思っていることの全てだった。
鉄崎さんは俺の彼女だ。
だからこそ、大切にしたいし、特別でありたいと思う。
「そ、それは、す、好きなのでは?」
俺の言葉におそるおそるそう言った隆太の一言を皮切りに、先ほどまで静かすぎた部室内がざわめき出した。
「まさか…。そんなまさかだよな?」
「悠里、冗談だよな?さすがにな?」
「好きになったのか、俺以外のやつを…」
皆、一様に好きなことばかり言っているが、ただ一つ共通点をあげるのならば、やはり全員顔色があまり良くない。
信じたくない、と顔に書かれている。