推しに告白(嘘)されまして。
「お前、それ嫉妬じゃん」
部員たちの予想外のリアクションに戸惑っていると、俺の隣で着替え終えた陽平が、至極当然のように淡々とそう言ってきた。
「悠里、優しいからいろいろ我慢してるんだろ?相手のことを思いやることも大事だけど、自分を思いやることも大事だからな。してほしいこと、やめてほしいことくらいちゃんと言わないと」
「…なるほど」
陽平の言葉がすっと頭に入り、俺は自然と頷く。
それから陽平に言われた通り、鉄崎さんに俺が求めていることについて考えてみた。
華守のことを名前で呼ぶのなら、当然、彼氏である俺のことも名前で呼んでもらいたい。
ホーム画面に俺じゃなくて、華守がいるのはなんかモヤモヤするからやめて欲しい。
脳裏に鉄崎さんの姿が浮かぶ。
一つにまとめられた綺麗な黒髪を揺らしながら、鉄崎さんが笑ってる。
鉄崎さんはいつも頬を赤らめながら俺に「かっこいい」と言う。無意識に向けられるそれに俺はいつも嬉しい気持ちになった。
たくさんの人に「かっこいい」と言われてきたが、鉄崎さんの「かっこいい」が今までで一番、特別で、嬉しかった。
「尊い」とか、「眩しい」とか、いろいろおそらく無意識に口にしている鉄崎さんだが、やはり、鉄崎さんからの「かっこいい」が俺は欲しい。
「なぁ、俺がかっこいい時ってどんな時だと思う?」
「「悠里がかっこいい時?」」
俺の質問に、その場にいた全員が一斉に、何を言っているんだ、と言いたげな目でこちらを見る。