推しに告白(嘘)されまして。





「バスケ部の王子が何言ってるんだよ」

「あの告白の嵐を忘れたのか」

「何もしなくてもかっこよくね?」

「黙って立ってるだけで十分じゃん」



それからその場にいた部員たちは、呆れたように笑いながらも、どんどん思ったことを口にしていった。
だが、どの言葉もあまり参考にはならず、ますますどうしたらいいのかわからなくなった。

そんな中、隆太が椅子から勢いよく立ち、目を輝かせながら言い放った。



「そんなもん、バスケしてる時に決まってるっしょ!エース!」



隆太の言葉がストンと俺の胸へと落ちる。

そうか。
俺のかっこいい時ってバスケをしている時なのか。

そこまで考えて、俺の中にある考えが浮かび上がった。
鉄崎さんにきちんとした練習試合を見てもらおう、と。

部活をしている俺なら鉄崎さんも見たことがあるかもしれない。
しかし、勝ち負けにこだわる真剣なバスケの試合は見たことはないだろう。
その試合を見て、鉄崎さんにかっこいい、と思ってもらおう。

週末にはちょうど、華守学園と練習試合がある。
それに鉄崎さんを誘うのだ。

そのことを早速、みんなに伝えると、



「いいじゃん。かっこいいとこ見てもらおうぜ」



と、まずは陽平が笑って賛同してくれた。
それからみんなも、



「賛成賛成!」

「鉄子が来れば、他校の悠里好き女子にも大いに牽制できるしな!」

「これで悠里のモテ伝説をまた一つ潰せるな!」



と、笑顔で賛同してくれた。

こうして俺は週末の練習試合に、鉄崎さんを誘うことを決めたのだった。
鉄崎さんに少しでも「かっこいい」と思ってもらう為に。



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