推しに告白(嘘)されまして。
改めて、キッと緩み切った顔に力を込め、いつものようにきちんとすまし顔を作る。
それから何となく、私の隣でスマホを触る雪乃を見ると、雪乃は表情一つ変えず、誰かとスマホで何やらやり取りをしていた。
おそらくお相手は、先ほど体育館の入り口で声をかけてきた他校のイケメンだろう。
ここに来る時も、
『他校のイケメンを捕まえる☆』
と、うきうきしていた。
そしてその宣言通り、雪乃は声をかけてきたいろいろなイケメンと、次々に連絡先を交換していた。
その流れで私にも声をかけられそうになったが、そこは雪乃がいるので、そうならないように上手く立ち回ってくれた。
ーーー雪乃、本当にすごい女である。
男を手玉に取るのが上手すぎて、その華麗な手腕に、毎回毎回脱帽だ。
そんなことを考えながらも、コート内が見える場所まで移動する。
それから開いていた大きな扉から、何となくコート内を覗いてみると、そこにはうちの高校のバスケ部と、今日の練習試合の相手である華守学園のバスケ部が、コートを半分に分けて、試合前の練習をしていた。
その中にはもちろん、私の推し、沢村くんもいる。
沢村くんはいつになく真剣な表情で、ボールを投げたり、走ったりしていた。
その姿に思わず視線が釘付けになる。
とてもとてもかっこいい。
間違いなく世界で一番眩しい。
「鷹野ファイ!」
「オウ!」
「ファイ!」
「オウ!」
コート内に両校の迫力のある掛け声が響き渡る。
気合の入った声は止まることなく、上げられ続け、この場を熱気で包んだ。
その光景に息を呑む。
さすがに今この状況で、沢村くんに「来たよ!試合頑張って!」と、とてもじゃないが声はかけられない。
なので、私はさっさとこの場から離れて、2階のギャラリーへと移動することにした。