推しに告白(嘘)されまして。
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「華守学園、何か普通に強そうだったよね」
沢村くんと別れた後。
2階のギャラリーを目指し、私の横で私と同じように階段を登る雪乃に、先ほどチラリと見えた今日の練習試合の相手、華守学園について話を振る。
うちの高校、鷹野高校バスケ部はスポーツ科もあり、いわゆる強豪校の部類だ。
地区予選優勝は当たり前で、全国大会での高い成績も目指せる力を持っている。
対する今日対戦する華守学園は、この地区では中堅どころで、弱くもないが、決して突出して強いわけでもない高校だった。
何故私がここまでうちの地区のバスケ部事情に詳しいのかというと、それはもちろんこの日の為にいろいろと調べたからだ。
「そうね。柚子の話的に、金持ち学校のボンボンなんてうちの相手にならないんじゃない?とか思ってたけど、そうでもなさそうよね」
「ね。普通に大きかったし。上手そうな感じしたよね」
雪乃とそんなことを話しながらも、さらに階段を登っていく。
すると、そんな中で、雪乃はふと、思い出したかのように口を開いた。
「てか、千晴くんの名字と同じよね、華守って」
「…え、まあ、そうだね」
雪乃の指摘に、私は、確かに、と頷く。
華守なんて珍しい名前がこんな狭い世界で被るとは、世間はとても狭いなぁ、としみじみ思う。
「千晴くんといえばだけど、この前の勉強会…と言う名の修羅場、どうだったの?柚子?」
先ほどまで「バスケ?別に興味ありませんが」といった表情を浮かべていた雪乃が、千晴の話になると、急にニヤニヤして楽しそうな表情になる。
その愛らしい目は興味でいっぱいだ。
なので、私はそんな雪乃に「別に普通だったよ。修羅場になんてならなかったし、みんな成績良くなってたし、いい会だったんじゃないかな?」と淡々と答えた。
「…ええ?それ本当?アンタが鈍くて修羅場に気付いてないだけじゃない?」
「いやいや。そんなことないって」
じとーっと信じられないとこちらを見る雪乃に、苦笑いを浮かべながらも、やっと2階のギャラリーへと着く。
それから適当に席を選び、座ろうとしたその時。
突然、2階のギャラリー内がざわめき出した。