ひとりぼっちの転生幼女でしたが、最愛の家族ができました~実は神子だった私、ハイスペ兄から溺愛されつつ癒しの才能発揮します!~
それからは、あっという間だった。
私が使っていた物のほとんどは施設の備品で、私物は小さなマグカップだけ。これは共有しない物だから、持っていってもいいみたい。
そんな私を見て神王様が「これからたくさん増やしていこう」と言って優しく抱きしめてくれたから、不覚にも泣きそうになってしまったよ。
施設から卒業する時に着る服を身につけた私は、ルームメイトだった子どもたちの泣き声で見送られている。絵本の読み聞かせ、私以外もやってくれたらいいんだけど……。
十二番だけは顔を真っ赤にして黙ったままだった。神王様に抱っこされた状態で手を振ると、私に向けて十二番はなにかを投げてきた。
周りにいた騎士さんのひとりが素早くキャッチして確認すると、私に届けてくれる。
それは小さな花束で、庭によく咲いているネモフィラに似た青い花が入っていた。
「おはな、ありがとー!」
「……おう」
持っていたマグカップに小さな花束を入れて、しっかりと抱える。
そんな私ごと包み込むように抱っこしてくれる神王様に、ほっこりとして顔が緩む。
馬車に乗った神王様と私は、石畳の町をゆっくりと進んでいく。
たくさんの人たちから「神王様万歳!」という声をかけられて、私は窓から見えないように小さくなっていた。
「どうした?」
「ひと、たくさん、こっちみてる」
「そろそろ町を出る。耐えられるか?」
「だいじょぶ」
気分が悪いわけじゃなくて、人から見られるのに慣れていないだけです。
町から出たところで、護衛の騎士さんたちとはお別れとのこと。
神王様と(抱っこされている)私も馬車から出て挨拶する模様。どんな場所でも世界でも、挨拶ってやつは大事だよね。うんうん。