野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)
右大将(うだいしょう)様のご家庭内の問題に尚侍(ないしのかみ)様はうんざりしてお気を滅入(めい)らせていらっしゃる。
内裏(だいり)にお上がりになればご気分も変わるかもしれない>
尚侍様のご機嫌をとりあぐねて、右大将様は思いつかれる。
<『せっかく尚侍に任命したのに内裏で働かないとは』と(みかど)不本意(ふほんい)にお思いでいらっしゃる。参内(さんだい)妨害(ぼうがい)するのは帝に無礼(ぶれい)だと、帝はもちろん源氏(げんじ)(きみ)内大臣(ないだいじん)様もお怒りになるだろう。夫のある女性が(みや)(づか)えすることもめずらしくはないのだから>
思いきって新年から内裏にお上げになった。

儀式(ぎしき)を重々しく行って参内なさる。
源氏の君と内大臣様、そして右大将様のご勢力(せいりょく)まで合わさった方だもの。
若君(わかぎみ)や実の弟君(おとうとぎみ)たちが熱心にお世話なさって、立派なご様子でいらっしゃる。
承香殿(しょうきょうでん)という建物にお部屋をいただかれた。
同じ承香殿の西側には式部卿(しきぶきょう)(みや)様の姫君(ひめぎみ)である(おうの)女御(にょうご)様がお暮らしになっている。
よりによってこのおふたりがすぐ近くにお暮らしになるのは何の因縁(いんねん)かしら。
姉君(あねぎみ)の夫を(うば)った女だと思うと、女御様は尚侍様と仲良くなどなさらないでしょうね。

とはいえ、後宮(こうきゅう)全体は悪い雰囲気ではないの。
(きさき)様たちがそれぞれに美しさや教養を競い合って、見どころの多い時代よ。
中宮(ちゅうぐう)様の他に何人かのご立派な女御様がいらっしゃる。
更衣(こうい)様は多すぎず、おふたりだけがお仕えなさっている。
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