野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)
一晩かけておめでたい曲を演奏して回る行事が行われる。
内裏(だいり)(みかど)御前(ごぜん)からはじまって、中宮(ちゅうぐう)様の御前、一旦(いったん)内裏を出て上皇(じょうこう)様のお住まい、また内裏に戻って東宮(とうぐう)様の御前という順番で楽団(がくだん)が回る。
にぎやかな行事だからたくさんの人が楽しみにしているわ。
それぞれの会場で見物(けんぶつ)席が用意されて、女性たちは(すだれ)の下から華やかな着物の(そで)(のぞ)かせながら見物するの。

東宮様の御前に回ってきたのは、夜がほのぼのと明けるころだった。
東宮様は十三歳、まもなくご元服(げんぷく)でいらっしゃる。
母君(ははぎみ)女御(にょうご)様は華やかで、おふたりとも現代的な方よ。

今回の行事では玉葛(たまかずら)尚侍(ないしのかみ)様が軽食で楽団をもてなす係をなさる。
舞人(まいびと)のなかに内大臣(ないだいじん)様のまだ小さいお子と右大将(うだいしょう)様のご長男がいらっしゃるので、目を()めてご覧になる。
尚侍様にとってどちらも他人ではいらっしゃらないもの。
(すだれ)の奥で女房(にょうぼう)などが見物している。
ちらりと(のぞ)く袖の色合いが、他のどのお(きさき)様の見物席よりも美しい。
お出しになったご褒美(ほうび)も軽食も、作法(さほう)どおりだけれど工夫がしてあっておもしろかった。
そういうもののご準備は右大将様がなさったみたい。
尚侍様も女房たちも、しばらくの間はこうやって内裏で楽しく暮らしたいとお思いになっている。
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