野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)
右大将様は、内裏のいつもお役目をなさるお部屋に控えていらっしゃって、一日中尚侍様にお手紙をお書きになっている。
「もうよろしいでしょう。今夜には内裏からご退出なされませ。これをきっかけにずっと内裏にいたいなどとおっしゃっては困りますから」
ひたすら同じことをおっしゃるけれど、尚侍様はお返事なさらない。
女房たちが代わりに申し上げる。
「源氏の君が、『ゆっくりと宮仕えしていらっしゃるように。帝は待ちかねていらっしゃいましたし、次はいつになるか分かりませんから、帝がご満足なさって退出のお許しをお出しになってからお下がりなさい』と仰せでした。今夜までというのはあまりにあっけないことではございませんか」
右大将様はいまいましくお思いになるけれど、帝や源氏の君のご意向と言われたら何もおっしゃれない。
「『短期間ならば』という約束で宮仕えを認めてさしあげたのに、思いどおりにならない人だ」
と嘆いていらっしゃる。
「もうよろしいでしょう。今夜には内裏からご退出なされませ。これをきっかけにずっと内裏にいたいなどとおっしゃっては困りますから」
ひたすら同じことをおっしゃるけれど、尚侍様はお返事なさらない。
女房たちが代わりに申し上げる。
「源氏の君が、『ゆっくりと宮仕えしていらっしゃるように。帝は待ちかねていらっしゃいましたし、次はいつになるか分かりませんから、帝がご満足なさって退出のお許しをお出しになってからお下がりなさい』と仰せでした。今夜までというのはあまりにあっけないことではございませんか」
右大将様はいまいましくお思いになるけれど、帝や源氏の君のご意向と言われたら何もおっしゃれない。
「『短期間ならば』という約束で宮仕えを認めてさしあげたのに、思いどおりにならない人だ」
と嘆いていらっしゃる。