野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)
右大将(うだいしょう)様は、内裏(だいり)のいつもお役目をなさるお部屋に(ひか)えていらっしゃって、一日中尚侍(ないしのかみ)様にお手紙をお書きになっている。
「もうよろしいでしょう。今夜には内裏からご退出なされませ。これをきっかけにずっと内裏にいたいなどとおっしゃっては困りますから」
ひたすら同じことをおっしゃるけれど、尚侍様はお返事なさらない。

女房(にょうぼう)たちが代わりに申し上げる。
源氏(げんじ)(きみ)が、『ゆっくりと(みや)(づか)えしていらっしゃるように。(みかど)は待ちかねていらっしゃいましたし、次はいつになるか分かりませんから、帝がご満足なさって退出のお許しをお出しになってからお下がりなさい』と(おお)せでした。今夜までというのはあまりにあっけないことではございませんか」

右大将様はいまいましくお思いになるけれど、帝や源氏の君のご意向(いこう)と言われたら何もおっしゃれない。
「『短期間ならば』という約束で宮仕えを認めてさしあげたのに、思いどおりにならない人だ」
(なげ)いていらっしゃる。
< 24 / 37 >

この作品をシェア

pagetop