野いちご源氏物語 三一 真木柱(まきばしら)
帝が尚侍様のお部屋へ行かれたことをお聞きになった右大将様は、心配でたまらなくなって内裏からの退出をしきりにお勧めになる。
尚侍様ご自身も、
<このまま内裏にいれば帝との間に恐れ多いことが起きるかもしれない>
とご不安なの。
内大臣様にうまくお願いなさって、帝からご退出のお許しをいただかれた。
「仕方ありません。無理に引き留めたら、右大将はもう二度とあなたを参内させてくれないでしょうから。つらいことです。私が最初にあなたを求めたのに、他の人にかすめ取られたあげく、その男のご機嫌をとって従わなければならない。昔の物語にもそういう気の毒な人物がいましたね」
悔しくお思いになっている。
<噂で聞いていたよりもずっと美しい人だ。何も知らされずふつうの女官として上がってきたとしても放ってはおけなかっただろう。右大将がねたましい。どうにかして私が本気だと分からせたい>
真剣にお気持ちを伝えようとなさるから、尚侍様は恐れ多く、現実ともお思いになれない。
源氏の君、内大臣様、右大将様のところから、それぞれ家来がお迎えにきている。
右大将様が何度も催促なさるけれど、帝は尚侍様をお離しにならないの。
「右大将は私を守る役職とはいえ、ずいぶんと近くで警護してくれるものだな」
騒がしく尚侍様を急かすお声に苦笑して皮肉をおっしゃる。
「あの人が邪魔をしたとしても、必ずまた参内なさい」
ただそれだけの仰せだけれど、お顔立ちも雰囲気もすばらしい帝がおっしゃるから、尚侍様は感激なさる。
「帰したくないが、心配している人も気の毒ではある。さて、これからはどうやって手紙を届けたらよいだろう」
「風にお言伝くださいませ。お美しいお妃様たちにとても敵わない私のところまで吹いてまいりますか心許のうございますけれど」
完全に拒否するわけではない尚侍様のご様子をかわいらしいとお思いになりながら、帝はふり返りがちにお帰りになった。
尚侍様ご自身も、
<このまま内裏にいれば帝との間に恐れ多いことが起きるかもしれない>
とご不安なの。
内大臣様にうまくお願いなさって、帝からご退出のお許しをいただかれた。
「仕方ありません。無理に引き留めたら、右大将はもう二度とあなたを参内させてくれないでしょうから。つらいことです。私が最初にあなたを求めたのに、他の人にかすめ取られたあげく、その男のご機嫌をとって従わなければならない。昔の物語にもそういう気の毒な人物がいましたね」
悔しくお思いになっている。
<噂で聞いていたよりもずっと美しい人だ。何も知らされずふつうの女官として上がってきたとしても放ってはおけなかっただろう。右大将がねたましい。どうにかして私が本気だと分からせたい>
真剣にお気持ちを伝えようとなさるから、尚侍様は恐れ多く、現実ともお思いになれない。
源氏の君、内大臣様、右大将様のところから、それぞれ家来がお迎えにきている。
右大将様が何度も催促なさるけれど、帝は尚侍様をお離しにならないの。
「右大将は私を守る役職とはいえ、ずいぶんと近くで警護してくれるものだな」
騒がしく尚侍様を急かすお声に苦笑して皮肉をおっしゃる。
「あの人が邪魔をしたとしても、必ずまた参内なさい」
ただそれだけの仰せだけれど、お顔立ちも雰囲気もすばらしい帝がおっしゃるから、尚侍様は感激なさる。
「帰したくないが、心配している人も気の毒ではある。さて、これからはどうやって手紙を届けたらよいだろう」
「風にお言伝くださいませ。お美しいお妃様たちにとても敵わない私のところまで吹いてまいりますか心許のうございますけれど」
完全に拒否するわけではない尚侍様のご様子をかわいらしいとお思いになりながら、帝はふり返りがちにお帰りになった。