一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
『来月のイベントに出せそう?』
「うん、いける」
『私もだいぶ作れたから。予定どおり納品できそう』
「頑張ろう」
『うん』
お互い趣味の延長線で創作系イベントに出店し始めたけど、回を重ねるごとに常連さんも増えてきて作品制作にも熱心になってきている。わざわざ足を運んでくれる人がいるからこそ、頑張って作ろうとお互い鼓舞しあったタイミングで、玄関が開く音がした。
「あ、帰ってきた」
『お迎えしてくる?』
「うん」
『んじゃあ、またね』
通話を切って、ぬいぐるみを机の上に置いてから部屋を出る。といっても、ドアを開けたらすぐ廊下で、そこから左を向けば玄関が見える。わざわざ出迎えなくてもいいと初日に言われたから、部屋から顔を出す程度にしている。
「おかえりなさい」
「あ、ただいま」
この一週間の流れどおり、私のかけた声に彼が淡々と返す。今日も同じかと思ったけど、若干の違和感に首を傾げた。部屋から完全に出て、スリッパを履き終えた彼の顔を覗き込む。
「ごはんは食べました?」
「いや、大丈夫」
鷹士さんは目を伏せて一歩踏み出す。そのスーツの袖を反射的に引いた。
「熱があるんじゃないですか?」
「少し寝不足なだけです」
私を一瞥しながら即答した。確かに目の下にうっすらと隈が見える。顔色も悪い。寝不足に見えるけれど、どこか気怠げな動作。それにすぐに寝不足と言い張る彼の態度。明らかに何かを隠そうとしている。
絶対熱がある。自覚しているならわりとつらいはず。
スーツを摘まんだ指先は離さず、彼に笑いかけた。
「私、見ただけで大体の体温がわかる能力があるんです」
「は?」
「高校の友達からはサーモグラフィーつぐみと呼ばれているほどで。今、発熱している可能性があります。熱計りましょう」
「今、大体の体温がわかるって……」
「大体なので。精密な数値は機械頼りです」
「うん、いける」
『私もだいぶ作れたから。予定どおり納品できそう』
「頑張ろう」
『うん』
お互い趣味の延長線で創作系イベントに出店し始めたけど、回を重ねるごとに常連さんも増えてきて作品制作にも熱心になってきている。わざわざ足を運んでくれる人がいるからこそ、頑張って作ろうとお互い鼓舞しあったタイミングで、玄関が開く音がした。
「あ、帰ってきた」
『お迎えしてくる?』
「うん」
『んじゃあ、またね』
通話を切って、ぬいぐるみを机の上に置いてから部屋を出る。といっても、ドアを開けたらすぐ廊下で、そこから左を向けば玄関が見える。わざわざ出迎えなくてもいいと初日に言われたから、部屋から顔を出す程度にしている。
「おかえりなさい」
「あ、ただいま」
この一週間の流れどおり、私のかけた声に彼が淡々と返す。今日も同じかと思ったけど、若干の違和感に首を傾げた。部屋から完全に出て、スリッパを履き終えた彼の顔を覗き込む。
「ごはんは食べました?」
「いや、大丈夫」
鷹士さんは目を伏せて一歩踏み出す。そのスーツの袖を反射的に引いた。
「熱があるんじゃないですか?」
「少し寝不足なだけです」
私を一瞥しながら即答した。確かに目の下にうっすらと隈が見える。顔色も悪い。寝不足に見えるけれど、どこか気怠げな動作。それにすぐに寝不足と言い張る彼の態度。明らかに何かを隠そうとしている。
絶対熱がある。自覚しているならわりとつらいはず。
スーツを摘まんだ指先は離さず、彼に笑いかけた。
「私、見ただけで大体の体温がわかる能力があるんです」
「は?」
「高校の友達からはサーモグラフィーつぐみと呼ばれているほどで。今、発熱している可能性があります。熱計りましょう」
「今、大体の体温がわかるって……」
「大体なので。精密な数値は機械頼りです」