一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「ささっ、ゆっくりでいいから手洗いうがいして、着替えてください」
背中を押してソファから立たせた。こちらを振り返ったけれど、私の折れない態度にもう抵抗するのも面倒なのか素直に洗面所へと向かっていく。
扉が閉まった後に私は急いでキッチン台の前に立つ。薬の前に何か胃に入れたほうがいい。あの分だと夜はおろか昼もろくに食べていないかもしれない。
手を洗ったところで、彼がリビングに戻ってきた。私は片手鍋を吊り戸棚から出しながら声をかける。
「お粥作ったら食べられそうですか?」
「おかまいなく」
「今は食べるかどうかの話です」
「……少しなら」
「わかりました。部屋に運ぶのでゆっくりしていてください」
私がにこりと笑うと彼は小さく会釈をして部屋へと入った。その足取りが先ほどよりも怠そうで心配が大きくなる。
さっさと作って持っていこう。
時短のために冷凍ごはんと多めの水を鍋に入れる。火にかけているうちに、漬物と梅干しを冷蔵庫から出して薬味皿に入れた。
お粥が出来上がると、水と薬をトレイに一緒に載せていく。リビングの奥にある扉。実は一度も入ったことがない鷹士さんの寝室だ。お互いの生活に干渉しないという契約上、彼がいない間は開かずの間だった。妙な緊張が全身を覆い、ドアをノックするだけでもぎこちなくなる。
「どうぞ」
ドアの向こうから小さく返事があった。扉を開くと、彼はトレーナーとスウェットのボトム姿で、クイーンサイズのベッドに腰掛けていた。その隣には机があって、さっき持っていたビジネスバッグが置かれている。それ以外はほとんど物がなくて、簡素さはビジネスホテルみたいだ。帰国して一週間しか経っていないから生活感がないのか元々の趣味嗜好なのか。あまりキョロキョロしていても不躾なので、お粥を運ぶことだけに集中する。サイドテーブルにトレイを置き、それをベッド脇に寄せた。
背中を押してソファから立たせた。こちらを振り返ったけれど、私の折れない態度にもう抵抗するのも面倒なのか素直に洗面所へと向かっていく。
扉が閉まった後に私は急いでキッチン台の前に立つ。薬の前に何か胃に入れたほうがいい。あの分だと夜はおろか昼もろくに食べていないかもしれない。
手を洗ったところで、彼がリビングに戻ってきた。私は片手鍋を吊り戸棚から出しながら声をかける。
「お粥作ったら食べられそうですか?」
「おかまいなく」
「今は食べるかどうかの話です」
「……少しなら」
「わかりました。部屋に運ぶのでゆっくりしていてください」
私がにこりと笑うと彼は小さく会釈をして部屋へと入った。その足取りが先ほどよりも怠そうで心配が大きくなる。
さっさと作って持っていこう。
時短のために冷凍ごはんと多めの水を鍋に入れる。火にかけているうちに、漬物と梅干しを冷蔵庫から出して薬味皿に入れた。
お粥が出来上がると、水と薬をトレイに一緒に載せていく。リビングの奥にある扉。実は一度も入ったことがない鷹士さんの寝室だ。お互いの生活に干渉しないという契約上、彼がいない間は開かずの間だった。妙な緊張が全身を覆い、ドアをノックするだけでもぎこちなくなる。
「どうぞ」
ドアの向こうから小さく返事があった。扉を開くと、彼はトレーナーとスウェットのボトム姿で、クイーンサイズのベッドに腰掛けていた。その隣には机があって、さっき持っていたビジネスバッグが置かれている。それ以外はほとんど物がなくて、簡素さはビジネスホテルみたいだ。帰国して一週間しか経っていないから生活感がないのか元々の趣味嗜好なのか。あまりキョロキョロしていても不躾なので、お粥を運ぶことだけに集中する。サイドテーブルにトレイを置き、それをベッド脇に寄せた。