一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「鷹士の母親のことは聞いた?」
「はい」
「事故が起きた直後はバタバタしていて、特に鷹士が家を出なくちゃいけない時は大変だった。その時に菜々美に頼んで一日鷹士を預かってもらったんだ。君は覚えてるかな?」
「……はい」
嘘を付くのもおかしいから、首肯した。すると、お義父さんは少し口角を緩ませる。
「あの時はありがとう。鷹士も気が休まったようだった。斎賀の関係者だとどうしても身構えてしまうんだ。鷹士は母親が自分のせいで病んで記憶を失ったと思っている。今もね」
それは……なんとなくわかっていた。
母親の話をする時、彼はとても他人行儀だった。自分の肉親にしては距離を置いた、淡々と事実を述べていく姿は違和感があった。端からみれば親子関係の破綻した冷めた態度にも捉えられるだろうけど、説明の端々に母親は悪くないという言い回しがされていた。お義父さんが言ったような自責の念が瞳の奥に揺れているのが見えた。あくまで私の捉え方であって明確な根拠はないけれど……。
「鷹士のせいじゃないと何度言ってもきかなくてね。母親に会わないことで守っている……いや、贖罪のつもりなんだろう。本当は僕が悪いのに」
そこで言葉を切ったお義父さんは苦笑を浮かべていた。どういう意味なのかと目で問えば、苦々しさかさらに濃くなっていく。
「鷹士が生まれてすぐその顔を見た時、正直百合恵のことを一瞬疑ってしまったんだ。本当に俺の子なのかと」
「え……」
「もちろん、不貞をするような人ではない。わかっているのに、一瞬でもその考えが頭に浮かんだ。その時の僕の顔はひどかっただろうね。百合恵は愕然としていた。彼女の心が病んだのは僕のせいだ」
「はい」
「事故が起きた直後はバタバタしていて、特に鷹士が家を出なくちゃいけない時は大変だった。その時に菜々美に頼んで一日鷹士を預かってもらったんだ。君は覚えてるかな?」
「……はい」
嘘を付くのもおかしいから、首肯した。すると、お義父さんは少し口角を緩ませる。
「あの時はありがとう。鷹士も気が休まったようだった。斎賀の関係者だとどうしても身構えてしまうんだ。鷹士は母親が自分のせいで病んで記憶を失ったと思っている。今もね」
それは……なんとなくわかっていた。
母親の話をする時、彼はとても他人行儀だった。自分の肉親にしては距離を置いた、淡々と事実を述べていく姿は違和感があった。端からみれば親子関係の破綻した冷めた態度にも捉えられるだろうけど、説明の端々に母親は悪くないという言い回しがされていた。お義父さんが言ったような自責の念が瞳の奥に揺れているのが見えた。あくまで私の捉え方であって明確な根拠はないけれど……。
「鷹士のせいじゃないと何度言ってもきかなくてね。母親に会わないことで守っている……いや、贖罪のつもりなんだろう。本当は僕が悪いのに」
そこで言葉を切ったお義父さんは苦笑を浮かべていた。どういう意味なのかと目で問えば、苦々しさかさらに濃くなっていく。
「鷹士が生まれてすぐその顔を見た時、正直百合恵のことを一瞬疑ってしまったんだ。本当に俺の子なのかと」
「え……」
「もちろん、不貞をするような人ではない。わかっているのに、一瞬でもその考えが頭に浮かんだ。その時の僕の顔はひどかっただろうね。百合恵は愕然としていた。彼女の心が病んだのは僕のせいだ」