一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「さっきのは人形作り?」
唐突に振られた話題にマグに伸ばしかけた手が止まる。動揺を悟られないように、私は改めてマグを持つと彼に笑顔を向けた。
「そうそう。もうすぐフリマに出すから。友達と一緒に」
「へぇ、すごいな」
「いや、プロではないからあくまで趣味の域だよ。作るのが楽しいだけで」
「それでも、俺にはできない」
真剣な顔で褒められて照れる。同時に、彼が一心にぬいぐるみを縫い上げていく様を想像してまって吹き出した。当然、鷹士さんは怪訝そうに眉を顰める。
「なにか?」
「いや、鷹士さんがぬいぐるみ作ってるの想像したら似合わなくて」
「おい」
さらに眉がぐいっと寄る。機嫌を損ねてしまったと急いで笑いを引っ込めた。でも、完全には消せなくて半笑いみたいになる。
「ふふ、ごめんごめ……」
「俺も練習したらできるかもしれない」
「え」
聞き間違いか冗談かと思ったけれど、彼はいたって真顔でふざけている様子はない。さっきのも笑われた不快さではなく、自分の能力を見くびられたと思ったらしい。
「よかったら、教えてくれ」
「え、本気で?」
「ああ。何事も鍛錬だ。筋トレと同じで繰り返ししていくうちにある程度までは到達する。極めるとなると別だが、俺でもある程度まではできるはず」
「筋トレ……」
合っているようで合っていないような。絶妙なたとえに私は閉口したけど、わかったことはひとつ。
負けず嫌いだな。
それが、普段とは真逆の子供のようで、あまりに可愛くて私はまた小さく吹き出した。
「じゃあ、少しやってみよっか」
目の前の人は私の声にこくりと頷く。
本当にやるんだ。
半信半疑のまま私は自室に戻り、適当に毛糸と編み棒を持ってきた。
「いきなり裁断したものを縫っていくのは難しいと思うから、簡単な編み物のほうがいいかなと思うんだけど」
「任せる」
「じゃあ、毛糸の先を持って、棒はこう」
私は隣の席に座り、教えやすいよう彼へと椅子を寄せた。
「こうか?」
「えっと、こっちを持ったほうがいいから」
持ったこともないであろう編み棒を持つ彼の手を取りながら教えていく。長い指はまっすぐ綺麗だけど、骨張っていて自分のものより太い。
改めて男の人だと思うと今更ながら緊張してくる。ドキドキと早る心臓を理性で無視して教えることに集中する。
「まず、ここにひっかけて、間に通して。そう、あとはたるまないようにする」
「難しいな」
「ふふ、最初はみんなそう。慣れだよ。筋トレ筋トレ」
こういう反復作業は確かに筋トレに通じるものがある。彼は教えたとおりにゆっくりと棒を動かしていく。ぎこちないし、迷いはあるけれど丁寧だ。こういう作品は性格が出る。
唐突に振られた話題にマグに伸ばしかけた手が止まる。動揺を悟られないように、私は改めてマグを持つと彼に笑顔を向けた。
「そうそう。もうすぐフリマに出すから。友達と一緒に」
「へぇ、すごいな」
「いや、プロではないからあくまで趣味の域だよ。作るのが楽しいだけで」
「それでも、俺にはできない」
真剣な顔で褒められて照れる。同時に、彼が一心にぬいぐるみを縫い上げていく様を想像してまって吹き出した。当然、鷹士さんは怪訝そうに眉を顰める。
「なにか?」
「いや、鷹士さんがぬいぐるみ作ってるの想像したら似合わなくて」
「おい」
さらに眉がぐいっと寄る。機嫌を損ねてしまったと急いで笑いを引っ込めた。でも、完全には消せなくて半笑いみたいになる。
「ふふ、ごめんごめ……」
「俺も練習したらできるかもしれない」
「え」
聞き間違いか冗談かと思ったけれど、彼はいたって真顔でふざけている様子はない。さっきのも笑われた不快さではなく、自分の能力を見くびられたと思ったらしい。
「よかったら、教えてくれ」
「え、本気で?」
「ああ。何事も鍛錬だ。筋トレと同じで繰り返ししていくうちにある程度までは到達する。極めるとなると別だが、俺でもある程度まではできるはず」
「筋トレ……」
合っているようで合っていないような。絶妙なたとえに私は閉口したけど、わかったことはひとつ。
負けず嫌いだな。
それが、普段とは真逆の子供のようで、あまりに可愛くて私はまた小さく吹き出した。
「じゃあ、少しやってみよっか」
目の前の人は私の声にこくりと頷く。
本当にやるんだ。
半信半疑のまま私は自室に戻り、適当に毛糸と編み棒を持ってきた。
「いきなり裁断したものを縫っていくのは難しいと思うから、簡単な編み物のほうがいいかなと思うんだけど」
「任せる」
「じゃあ、毛糸の先を持って、棒はこう」
私は隣の席に座り、教えやすいよう彼へと椅子を寄せた。
「こうか?」
「えっと、こっちを持ったほうがいいから」
持ったこともないであろう編み棒を持つ彼の手を取りながら教えていく。長い指はまっすぐ綺麗だけど、骨張っていて自分のものより太い。
改めて男の人だと思うと今更ながら緊張してくる。ドキドキと早る心臓を理性で無視して教えることに集中する。
「まず、ここにひっかけて、間に通して。そう、あとはたるまないようにする」
「難しいな」
「ふふ、最初はみんなそう。慣れだよ。筋トレ筋トレ」
こういう反復作業は確かに筋トレに通じるものがある。彼は教えたとおりにゆっくりと棒を動かしていく。ぎこちないし、迷いはあるけれど丁寧だ。こういう作品は性格が出る。