一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「いつから作ってるんだ?」
「小学三年生くらいからかな。うち貧乏だったから、ぬいぐるみ欲しくても買ってもらうのが忍びなくて。でも、みんなランドセルや手提げかばんに可愛いやつつけてたりしててね。いいなぁって密かに思ってたら、ある日近所のおばちゃんがフェルト生地の小鳥のぬいぐるみくれたんだ。手のりサイズの」
私が小鳥を乗せたみたいに手のひらを椀のように丸くさせた。何も載っていない手。でも、当初の記憶は鮮明に想いだせる。可愛い青い小鳥だった。
「私鍵っ子で、いろいろ気にかけてもらってたからさ。物欲しそうに友達を見てたのも気づかれたんだと思う。恥ずかしかったけど、同時に可愛いぬいぐるみが嬉しくて。感動してたら『おばちゃんの手作りだから、よかったら一緒に作ってみない?』って言われて、迷わず頷いてて……そこからかな。欲しいものは自分でなるべく作ったかも。鞄とか簡単な洋服とか。一番はぬいぐるみが多かった。多分、初めの感動が忘れられなかったんだ」
だから、おばさんに聞いて自分の着なくなった服の布で作ってみたりした。最初はへたくそだったけど、何度か繰り返していくうちにちゃんとしたものになっていって。それが母を待つ時間の寂しさを埋めてくれていた。
「という、安直な流れ。お恥ずかしいけど」
自分語りは慣れていない。羞恥で顔を俯かせる。すると、隣の編み棒が止まった。
「全然恥ずかしくない。前にも言ったが、十分特技だ。誇っていい」
「ありがとう」
優しい言葉が降ってきて、自然と顔が上がっていた。お世辞でなくただ私のスキルを褒めてくれる。それによって孤独に耐えていた過去も浮かばれる気がして胸が熱くなった。
「……ここからどうすればいい?」
「えっと、ここに通して」
思わず身を乗り出したら、鷹士さんの振り返った顔とぶつかりそうになる。当たる寸前で止まったけど、至近距離で見つめ合う形に自ずとふたりとも硬直し、同時に顔を背けた。
「ご、ごめん」
「いや」
端的な答えが返ってきたけど、顔が見られない。自分の頬が熱く感じる。赤面している顔を見せるわけにはいかなかった。
再びうるさくなる鼓動を早く収まれと念じる。ただのハプニングでびっくりしただけ。勘違いを起こそうとする自分の心に修正をかける。
「あの」
「は、はい?」
まだ動悸が収まっていない中、おずおずと振り向く。鷹士さんは私を目が合うと少し視線を横にずらした。