一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
最近、目が合うとこういう仕草をされることが多い。でも、私も人と見つめ合うのは得意ではないから、あまり気にしていない。
「今度知り合いがレストランをオープンするんだ。招待されていて、よかったら一緒に行かないか?」
「あ、奥様もご一緒にってまた言われた?」
「え、あ……そうだな」
「じゃあ、行かないとね。いつ?」
「来週あたりの夜」
「火曜日休みだし、あと水曜日なら早番で行ける」
「わかった。どちらかで予約して決まったらすぐに言う」
そうして、彼はまた編み物に集中し始めた。自分の好きなことに真剣に取り組んでくれているのは、けっこう胸に来る。同時に罪悪感も混じった。咄嗟に隠したあの人形のことを考えてしまうと……。
でも、あれは完成させなければならない。鷹士さんに気づかれないように美蘭さんに戻す。それだけは揺るぎなくて、私は口を引き結んだ。
夜中になって卓上スタンドライトが手元を照らす中、地道に布地を縫い合わせていく。
細部は手縫いだからこそ丁寧に、正確に。決して縫うのが早いほうではない。でも、出来上がりは誰が見ても綺麗に縫えているという自負はある。それが一番大切だと思っているから、一針一針に気持ちを込めていく。
最後にすべての縫い目をチェックして、新しく作った洋服を着せる。黒いズボンを履かせて、青い瞳に合うベビーブルーのセーターとマフラーを装着。
「よし」
可愛い。自画自賛だけど。絶対、また大切にしてくれると思う。
出来上がったものを袋に入れて完了。時計を見たら深夜三時目前だった。そろそろ寝ないと、遅番でも体調に響く。朝起きて美蘭さんにメッセージを送ることにして、ベッドに入り電気を消した。

< 47 / 91 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop