一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
そう考えながらも、その日は賃貸物件の検索をする気にはなれず、しんみりした気持ちのまま寝るしかなかった。とはいえ、なかなか眠れなくて結局二日連続寝不足状態で仕事に行くことになった。
朝からわりと客足が伸びて忙しかったから、疲労と傷心も忘れていられたけど、午後になってから一気に暇になった。
とはいえ、客がいないときでも仕事はある。明日補充される商品のチェックや包装紙の補充をしていたら、ガラスケースの前に人が立つのを視界の端に捕らえる。
「いらっしゃ……」
振り返った先で声が切れたのは、昨日ガンを飛ばしあって一触即発状態だった人だったから。
「鷹士さん」
私が呼べば、元々芳しくない表情に苦々しさが加わる。
そりゃ、嫌いな相手を見ればそうなるのもわかる。でも、買い物に来たけれど、私がいると思わなかったのだろうか。
それでも立ち去らないところをみると、うちの店に用があるらしい。
「あ、何か手土産でもお探し……」
「いきなり出ていくなんて何考えてる」
店に用かと思いきや私に会いに来たみたいだ。そういえば、昨日着信が何度か入っていた。電池切れで明里ちゃんの家で充電させてもらっていた間電源を切った状態で、それに気づいてスマホを起動させたのは今朝、職場の更衣室でだった。その時に鷹士さんと美蘭ちゃんから連絡が来ていたけれど、勤務時間ギリギリだったので何もせずロッカーに入れたままだ。
それを寝ぼけと疲労で鈍足になった脳が思い出した。無視した形になってしまった気まずさから視線を一度宙へと投げる。
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