一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
母は薪を割ったみたいな性格の持ち主で勝ち気だった。自分の指針にそぐわないことはしないし、私にも間違いだと思えば容赦なく指摘する。
祖父が訪ねてきて母の出自を聞かなければお嬢様だったなんて思わなかったし、駆け落ちの話もその時初めて聞いた。子供にはあまり聞かせる話でもないから黙っていたのだろう。
母には闘病中のストレスを与えたくもないし祖父にも黙ってもらっている。そもそも祖父と母は駆け落ちしてから一度も顔を合わせていないらしい。
そんな孫に頼まないといけないほど会社が逼迫していたのかと思うと少し同情する。あと、家や会社同士の利益のために結婚するとか、ドラマみたいなこと今もあるなんてびっくりした。
と、私が言えば、「自分のことなのに他人ごとみたいに言うね」と明里ちゃんに即指摘された。だって、あまりに自分の経験値を超える事態に見舞われたら、驚きを通り越して妙に冷静になってしまうものだ。
明里ちゃんはアクセサリーのビーズをワイヤーに繋げながら相槌を打つ。
『でも、いいんじゃない?誰も不幸せになってないならさ』
「どうだろ。あの人は私なんかと結婚する羽目になって損してるかも」
『王子は仕事第一だから何とも思ってないでしょ』
「鷹士ね」
本人に言えば、静かにキレられそうなことを明里ちゃんはすらすら言う。まぁここにいないからいいのだけど。
ぼんやりと約一年前に会ったっきりの彼を頭の中で浮かべたところで、スマホに通知が入った。
「ん?」
『どうした?』
「なんか今メッセージ入って。鷹士さんから」
滅多にこないメッセージに少し身構える。スマホをタップしてアプリを開くとその内容に目を剥いた。
「来週帰ってくるって!」
『え?マジ?』
「マジ!っていうか来週とか言うけどあと三日じゃん!」
今は金曜日だから、メッセージ内の月曜日という表記に釘付けになる。
「どうしよう。仕事終わりに疲れた勢いでタイムセールのお惣菜好きなだけ買って、家でぐだぐだ食べながらテレビ見て、ぬい作って寝落ちする生活ができなくなる!」
快適なひとり暮らしを満喫していたから、誰かがいるという生活に対応できるのか不安と焦りが一気に押し寄せてくる。
『はぁ、安定のつぐちゃんに安心する』
「え?」
呆れを通り越して感心するような眼差しを画面越しに向けてくる親友に私はきょとんと首を傾げた。
祖父が訪ねてきて母の出自を聞かなければお嬢様だったなんて思わなかったし、駆け落ちの話もその時初めて聞いた。子供にはあまり聞かせる話でもないから黙っていたのだろう。
母には闘病中のストレスを与えたくもないし祖父にも黙ってもらっている。そもそも祖父と母は駆け落ちしてから一度も顔を合わせていないらしい。
そんな孫に頼まないといけないほど会社が逼迫していたのかと思うと少し同情する。あと、家や会社同士の利益のために結婚するとか、ドラマみたいなこと今もあるなんてびっくりした。
と、私が言えば、「自分のことなのに他人ごとみたいに言うね」と明里ちゃんに即指摘された。だって、あまりに自分の経験値を超える事態に見舞われたら、驚きを通り越して妙に冷静になってしまうものだ。
明里ちゃんはアクセサリーのビーズをワイヤーに繋げながら相槌を打つ。
『でも、いいんじゃない?誰も不幸せになってないならさ』
「どうだろ。あの人は私なんかと結婚する羽目になって損してるかも」
『王子は仕事第一だから何とも思ってないでしょ』
「鷹士ね」
本人に言えば、静かにキレられそうなことを明里ちゃんはすらすら言う。まぁここにいないからいいのだけど。
ぼんやりと約一年前に会ったっきりの彼を頭の中で浮かべたところで、スマホに通知が入った。
「ん?」
『どうした?』
「なんか今メッセージ入って。鷹士さんから」
滅多にこないメッセージに少し身構える。スマホをタップしてアプリを開くとその内容に目を剥いた。
「来週帰ってくるって!」
『え?マジ?』
「マジ!っていうか来週とか言うけどあと三日じゃん!」
今は金曜日だから、メッセージ内の月曜日という表記に釘付けになる。
「どうしよう。仕事終わりに疲れた勢いでタイムセールのお惣菜好きなだけ買って、家でぐだぐだ食べながらテレビ見て、ぬい作って寝落ちする生活ができなくなる!」
快適なひとり暮らしを満喫していたから、誰かがいるという生活に対応できるのか不安と焦りが一気に押し寄せてくる。
『はぁ、安定のつぐちゃんに安心する』
「え?」
呆れを通り越して感心するような眼差しを画面越しに向けてくる親友に私はきょとんと首を傾げた。