一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
「鷹士さん、家着きましたよ~」
夜は旦那様を支えながらの帰宅になった。
「うー」と小さく反応はあるけれど、言葉になっていない。白皙の肌の奥からほんのりと桃色が滲みでている。イベント後の恒例、居酒屋で反省会と称した打ち上げをして、鷹士さんも参加した。だいぶ手伝ってくれたし、目立つ見た目によりお客様も多く来て、販促効果もあった。だから功労者のひとりとして明里ちゃんが「王子も打ち上げに行こうー」とうっかりあだ名で呼び、私はひやひやした。鷹士さんはスルーしていたから聞こえていなかったのかもしれない。
そこで私と明里ちゃんは解放感から、ハイテンションで飲み放題を満喫。鷹士さんは酒を煽りながら笑う女ふたりをあたたかく見守りながら、庶民的でリーズナブルな料理を食べていた。
ところが、飲み会か一時間過ぎたところで、私がトイレに席を立ち、帰ってきたら鷹士さんがテーブルに突っ伏していた。どうしたのかと駆け寄ると、健やかな寝息が聞こえてくる。
「それを一口飲んだらいきなり寝た」
と明里ちゃんが指さしたグラス。それに口をつけたら、酒の味がした。私のウーロン杯だ。彼のウーロン茶と間違えたのだ。
え、鷹士さんって下戸だったっけ?
そういえば、前のパーティーでもジンジャエールを飲んでいた。焼肉の時もウーロン茶。でも、それは車の運転があるからと思っていた。思い返せば家にアルコールの類はない。
ウーロン杯一口だけでここまで酩酊する人見たいことがないから唖然とするけど、すぐに我に返る。今はそれどころじゃない!
打ち上げはそこでお開きになって、呼んだタクシーに彼を明里ちゃんと運んでマンションまで帰った。常駐しているコンシェルジュが部屋の前まで共に支えてくれたから助かった。高身長の成人男性ひとりを女の私が支えて運ぶのは大変で、タクシーからエントランスまで明里ちゃんにも手伝ってもらったけどふたりとも四苦八苦だった。
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