一年だけの契約妻で、ほぼ放置されていたのに
偶然、あの人形と鷹士さんが似ていたわけではなく、元々彼がモデルなのだ。だからこそ、百合恵さんの手に渡ったと知って感慨深くもあり、人形でも母親の元にいられることに少し嬉しくなった。だから、何とかして直そうとも思った。
「その時はわからなかったけど、王子が現れて合点がいったもん。この人のこと本当に好きなんだなって。だから、こうして縁が結ばれて結婚できるのって奇跡だと思う。最初は形式的でもさ。ふたりを見てたら普通に仲のいいカップルに見えたよ」
ふふと笑う明里ちゃんは自分のことのように嬉しそうだ。ストンとその言葉が胸の中に下りてくる。
少しずつだけど、鷹士さんと本物になれたらいい。いろいろ複雑に考えたけれど、願いは単純だった。
「あ、私そろそろ戻らないと」
腕時計を見て言う彼女に私は肩を竦めた。
「ごめんね、仕事の日に」
「全然。むしろつぐちゃんとランチできてラッキー。午後から頑張れそう!あ、また次の新作の打ち合わせしようね」
「うん。今日はありがとう。すっきりした」
「よかった」
明里ちゃんに感謝すると、彼女はほんわかと陽だまりみたいな微笑みを返してくれた。
店を出た時は午後一時すぎ。今日は風もなくて冬にしてはまだあたたかい。
食材を買って帰ろう。
最寄り駅について行き先をマンション近くのスーパーに決める。
外食でもいいのだけど、休みの日に作り置きをしておいたほうが仕事の日はかなり楽だ。当分一食分しか作らないから量はそこまで買い込まないし。
実は、昨日から鷹士さんは急な出張で九州に行っている。三日ほどの予定で、帰ってくる日が明日のクリスマスイブ、彼の誕生日。この出張は私が答えを考えるには最適な天の采配だと思う。あとは、自分の気持ちをきちんと整理して、彼と話し合えるようにしよう。
責任をとってくれるのはありがたいことだけど、私はただの無期限の妻になりたいわけじゃない。
私の気持ちを伝える。好きだから責任を取ってまで一緒にいてほしくないと言う。関係性が崩れてしまうかもしれないけど、元は一年で別れる話だ。斎賀のアパレル事業も立て直しができたし、もう私はいらない。
どうなるかわからないけど、優しくしてくれているのはわかるから。否が応でも期待はしてしまう。
「斎賀つぐみ様」
火照り始めた頬をマフラーで隠すように引き上げたところで背後から呼ばれた。振り返れば、スーツ姿の長身の男性が立っている。二十代後半くらいで、ワックスで固めた七三わけの黒髪と黒のフレーム眼鏡をかけたのせいか、少し神経質そうに見える。
「その時はわからなかったけど、王子が現れて合点がいったもん。この人のこと本当に好きなんだなって。だから、こうして縁が結ばれて結婚できるのって奇跡だと思う。最初は形式的でもさ。ふたりを見てたら普通に仲のいいカップルに見えたよ」
ふふと笑う明里ちゃんは自分のことのように嬉しそうだ。ストンとその言葉が胸の中に下りてくる。
少しずつだけど、鷹士さんと本物になれたらいい。いろいろ複雑に考えたけれど、願いは単純だった。
「あ、私そろそろ戻らないと」
腕時計を見て言う彼女に私は肩を竦めた。
「ごめんね、仕事の日に」
「全然。むしろつぐちゃんとランチできてラッキー。午後から頑張れそう!あ、また次の新作の打ち合わせしようね」
「うん。今日はありがとう。すっきりした」
「よかった」
明里ちゃんに感謝すると、彼女はほんわかと陽だまりみたいな微笑みを返してくれた。
店を出た時は午後一時すぎ。今日は風もなくて冬にしてはまだあたたかい。
食材を買って帰ろう。
最寄り駅について行き先をマンション近くのスーパーに決める。
外食でもいいのだけど、休みの日に作り置きをしておいたほうが仕事の日はかなり楽だ。当分一食分しか作らないから量はそこまで買い込まないし。
実は、昨日から鷹士さんは急な出張で九州に行っている。三日ほどの予定で、帰ってくる日が明日のクリスマスイブ、彼の誕生日。この出張は私が答えを考えるには最適な天の采配だと思う。あとは、自分の気持ちをきちんと整理して、彼と話し合えるようにしよう。
責任をとってくれるのはありがたいことだけど、私はただの無期限の妻になりたいわけじゃない。
私の気持ちを伝える。好きだから責任を取ってまで一緒にいてほしくないと言う。関係性が崩れてしまうかもしれないけど、元は一年で別れる話だ。斎賀のアパレル事業も立て直しができたし、もう私はいらない。
どうなるかわからないけど、優しくしてくれているのはわかるから。否が応でも期待はしてしまう。
「斎賀つぐみ様」
火照り始めた頬をマフラーで隠すように引き上げたところで背後から呼ばれた。振り返れば、スーツ姿の長身の男性が立っている。二十代後半くらいで、ワックスで固めた七三わけの黒髪と黒のフレーム眼鏡をかけたのせいか、少し神経質そうに見える。