彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
『ありがとう』

『私もあなたを撮ってあげましょうか?』

『いや、この方がいい。ほら、ね』

 彼は私の隣に立って、あっという間に私とのツーショットを自撮りしてしまった。

 呆気にとられていると横でウインクしている。

『君はひとり?日本人だろう?』

『はい、日本人です。あなたはどちらから?』

『僕はロスから来たんだ。僕も一人旅なんだけど、よかったらこの後一緒にこの周辺を回らない?』

『はい、いいえ、あ……』

 イエスと答える癖がついていて、つい最初に言ってしまった。すると、嬉しそうに腕を取られた。びっくりして立ち止まる。

『いいえ、行きたくありません』

 周りを見ると、数人が私達を見ている。

『あの、このあとは約束があるんです』

 嘘だったが言うしかない。

『どこで?約束の時間まで僕と一緒にいようよ。ね?』

 どうしよう、どう言ったら諦めてくれるんだろう……。

 そんな時、後ろから日本語が聞こえた。

「遅くなってごめん。日本料理店を予約してある。時間がないから行こう」

「え?」

「ほら、急いで……」
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