彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 「すみませんが、琴乃のことは今後仕事のことだけ助けてやってください。あとのことは僕が責任を持って面倒をみます」

 「ちょ、ちょっと玲さん、何を言っているの?誰もそんなこと頼んでないし、私は許可してない。それにもう一度話し合ってきちんと別れるつもりですから」

 じろりと私を見た彼は、ぎゅっと手を握った。

 「そうだな。きちんと話し合って、分かれた道を繋ぐって昨日も言ったはずだが?」

 「玲さん……」

 「藤堂さん」

 「はい」

 「蔵原はひとりで色々と頑張ってましたよ。自分で何でも解決しようと必死でね。あなたに相談するように友達にも言われたらしいが、人の言うことを全く聞かないんだ」

 「よくご存じですね。根は天然なのに、変なところで頑固なんです」

 「「あはは……」」

 笑っている二人を見て、私は腹が立った。

 「ふたりとも何なの!」

 「色々周りに蔵原との関係を聞かれるようになってきて、様子が変だとは思っていました。探りを入れたりしてました?」

 佐田君が真顔で言う。

 「すみません。僕も焦ってしまった。あなたもいい男だし、ようやく見つけた琴乃を目の前で奪われるのだけは嫌だった」

 「奪われたかもしれないとは思わなかったんですか?」

 「少なくとも寮の周辺であなたの姿を見かけることは全くなかった。つまり、同僚なんですよね?」

 「やっぱり何日も見ていたのね、あなたこそ、警察に突き出します」

 遮るように佐田君が話した。

 「藤堂さん、まだ勝負はわかりませんよ」

 「まあ、そうですね。彼女は別れる気満々です。頑固者の説得はこれからです」
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