彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 彼は低い声で怒ったように言った。私はびっくりした。

「日奈さんとおつきあいしていないんですか?お似合いですよね」

「つきあってない。だから琴乃を取り戻しに来たんだ。電話であの時も言っただろう?記事はでたらめで、僕はその気がない。君だけだと言ったはずだ。どうして信じてないんだ」

「信じてました。でも、別れて一年、帰国したのに今まで探してなかったでしょう?」

「弦也君から聞いてないのか?僕はあの記事のせいで帰国が伸びて、あれから一年イギリスにいたんだ」

 驚いた。弦也は玲さんから連絡がきて、文句を言っておいた、姉さんに近寄るなと言ったから安心してと報告して来ただけだった。

「ごめんなさい、弦也からはそのことは聞いていませんでした。大変だったんですね」

「君に伝えたくても、連絡先を削除されてどれだけショックだったか……あげく、弦也君にも冷たくされた。まあ、気持ちは理解できるから彼のことを許す。弦也君は今どうしてる?」

「大学からもお誘いが来ていたんですが、働いて私を助けると言って実業団入りしました」

「そうだったのか。入院費とか大変なのか?」

「今はもう大丈夫です。これでも人気の講師なんでお給料はOL時代より高いんです」

「琴乃。正直に全て話して頼って欲しかった。君が僕をそこまで信頼していなかったのは、側にいられなかったことも大きい。これからは側にいる」

「もう遅いです。玲さんとやり直すのは無理です。考えた上で別れたんです、玲さんにもその方がいいと思って……」

「だとしたら大間違いだな。僕は君にフラれておかしくなった。僕がお母さんの主治医の先生と相談して、君の不安を取り除くからやり直してほしい」

「無理です!」

「君が僕と別れたのはお母さんのためだけ?違うよな、日奈のことを勘違いして一人で勝手に身を引いたんだろう?」

「ひどい、そんな言い方しないで」
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