彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「え?やだ、うそ……」

 私はうなじを抑えた。

「日本の若い女性がひとりでこんなところまで来ているのも珍しいし、狙われたのかもしれない。気を付けた方がいい。若い日本女性はターゲットになりやすいんだ。日本女性はどこか奥ゆかしくて強く出るのが苦手な人も多いからね」

 私はびっくりして、急いでまとめて結っていた髪を下ろした。

「すみません」

「謝ることはない。それより君はどうしてここに?」

「休暇です。明日ロンドン近郊で用事があってイギリスへ来たんですけど、ウインブルドンはずっと来たかったから先に回ったんです。あの、あなたは?」

「僕も休暇でここに来たんだ。でも僕はこっちに住んでる」

「え?」

 首をかしげてこちらを面白そうに見ている。

「僕は普段ロンドンで働いでいるんだ。この間はたまたま仕事で日本へ出張していたんだよ」

「そうだったんですか?!」

「そう。しかし君とこんなに短いスパンで、偶然にしてもこんなところでまた会うとは驚いたな」

 しかも、二度とも助けられた。びっくりだ。

「本当ですね。ロンドンのどこでお勤めですか?」

 この人は蓮見商事に知り合いがいるというし、あのパーティーに招待されていた企業なら知っているかもしれないと思い、念のため聞いてみた。

「僕はロンドンの日本大使館の書記官、いわゆる外交官なんだ」

「えええ!」

 私はびっくりした。

「すごい、外交官さんなんですか?それはとても尊敬します」

「何が?」
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