彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「あら、あなた……会ったことがあるような……」

 私は木下さんに頭を下げた。

「はい。四年前に私が上司に絡まれていたとき、藤堂さんが助けてくれて、そのあと声をかけて下さった上司の方ですよね?」

「あら、やっぱり、あのときの……あれ、あのときは確か……」

「はい、蓮見ロジスティックスに勤務していました」

「もしかして、セクハラ訴えてやめさせられたの?」

「いいえ。辞めたのは違う理由です」

「そう。それならよかった。それはそうと、藤堂……彼女と知り合いってどういうこと?」

「あのあと、彼女とイギリスで偶然再会したんです。それから交際をはじめました。ずっと遠距離でしたよ」

「嘘でしょ?!じゃあ、原口日奈との話はやっぱり違っていたのね」

「そうですよ。木下さんにはメールであの時否定したじゃないですか」

「ふーん。それにしてもイギリスで会った?よほど、縁があるのね」

「はい」

「藤堂は仕事もあるから、あなた一人になる時間もあるけど、英語講師なら大丈夫ね」

「正直少し心配なんですが……実践が足りていないので」

「あらあら、じゃあ実践してみて頂戴。さっそくだけど、行くわよ藤堂」

「はい。琴乃、悪い。すぐに戻ってくる。そのあたりでカナッペでもつまんでいて」

 隣にいた金髪の女性から英語で声をかけられた。このケーキが美味しいのよと笑って教えてくれた。ベルギーのチョコを使っているらしい。

 少し世間話をしたら、今度は彼女のエスコートをしていた男性から話しかけられた。

『あなたはパートナーがいるんですか?』

『はい、ホスト側の外務省の人です』
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