彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「君もイギリスデビューするところだったぞ」

「シンデレラにしてもらった威力はすごいわ。普段の私を見たらびっくりね」

「そんなわけない。君は本当に自分がわかってない。だから、大変だったんじゃないか。自覚しなさい」

 ふたりでテーブルの料理を皿に乗せていたら、見たことのある人が眼には言って来た。あれは蓮見商事の若社長だ。

 何より驚いたのは、社長の後ろにいるのが灰原部長だったからだ。

「うそ、灰原部長……」

 私の呟いた声に気づいたのか、彼がこちらを見た。そして、私に気づいたのか、驚いた様子で私の所に来てくれた。

 蓮見商事の若社長は反対隣りの美しい女性と話していたが、後ろにいた部長がこちらに来たので、私をじいっと見つめた。

「驚いたな、もしかして蔵原さん?」

「はい。お久しぶりです」

「いや、綺麗になったね。前から綺麗だったが、今日の君はすごいね」

「部長も素敵ですよ。部長は蓮見商事へ移られたんですか?」

「そう、今は本社の秘書室にいるんだ。驚きだろう?」

「そうなんですね。いえ、不思議じゃないです。灰原部長なら出世すると思ってました」

「こういう出世はしたくなかった。前の方がよかったよ。社長秘書の奥様が妊娠されてね。秘書室長が知り合いで、色々無害な僕にお声がかかったんだ」

「おい……灰原君。そこの美人とお知り合い?是非とも紹介してくれよ」

 蓮見商事の新社長が来た。社長もイケメンだが、私には玲さんの方がずっと素敵に見える。私を見る社長の目が気に入らない。まるで本部長みたいだ。
 
「社長。彼女は数年前までロジスティックスで僕の部下だったんです。仕事が出来るんですよ」

「ほおう。そうだったのか。じゃあ、僕の顔を知っていた?」
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