彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「はい、もちろんです社長。ご就任も噂で知っていました」

「こんな美人がロジスティックスにいたとは……。灰原君は仕事が出来て美人の彼女をどうして辞めさせたんだ?」

「それは……」

 灰原部長が口を濁したので、私ははっきりと社長に言った。

「ロジスティックスは全く住宅手当が出なかったので、やむを得ず辞めることになりました」

「……蔵原君!」

「これははっきり言われたな。グループ企業の福利厚生については見直す必要がありそうだね。貴重な意見ありがとう」

「いいえ」

「ククク……」

 横で身体を折って玲さんが笑っている。

「あれ、君は外務省の藤堂君じゃないか。日本に戻ったのか?」

「蓮見新社長。お久しぶりです。会長はお元気ですか?」

「うん、おかげさまでね。もしかして、彼女は君の知り合いとか?」

「はい、彼女は僕のパートナーですから手を出さないでください。あ、社長はもう既婚者でしたね。失礼いたしました」

 蓮見社長は真っ赤になった。

「失礼な、全く君は相変わらずだな」

 ごほんと後ろで灰原部長が咳払いをした。蓮見社長は女性が大好きだと噂があった。

 蓮見社長がいなくなり、灰原部長も頭を下げていなくなった。

「もう、玲さん。社長にそんな言い方まずいじゃないですか」

「君だってなかなかだぞ。社長に福利厚生を理由にやめたとはっきり言ったんだからな」

「だって本当のことです。私、嘘は下手だって言ったのは誰だったかしら」

「そうだな」
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