彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 すると、後ろから香水の匂いがしてきた。日奈さんだった。

「玲、仕事しないでここにいたのね。蔵原さん、お久しぶりね」

「お久しぶりです」

 胸の開いたドレスを着ている。とても素敵だった。前より色気あるような気がした。

 玲さんは私の肩を抱き寄せた。

「日奈。話ってなんだ?」

「玲。まだ内緒だけど、私結婚することになった」

「「え?!」」

 彼女は小さな声で言った。私達はそれなのに大きな声を出してしまった。

「大きな声を出さないで頂戴。映画監督の相馬さんと結婚するわ」

 相馬監督は確かこの間のカンヌ受賞の映画の監督だ。

「それはおめでとう。驚いたな」

「おめでとうございます」

「ありがとう。よりが戻ってよかったわね、玲。それにしても蔵原さんのほうから玲に別れを切り出すとは思ってなかった。玲を信じているって言ってたのにね。チャンスだと思ったら大間違いだった」

「当たり前だ」

 私は驚いて玲さんを見た。

「日奈が琴乃に会ったせいで僕はフラれたと思ったからね。あの時は加減が効かなくて、日奈に相当冷たく当たっただろう。自覚はある」

「怖いのなんの……それできっぱりあきらめたわ。まあ、自業自得ってとこかしらね。蔵原さん、あの時はごめんなさいね」
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