彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
 プイっと横を向いてキッチンへ行く。

 水を飲むためキッチンへ入った彼は冷蔵庫のミネラルウオーターを取り出して飲んでいる。

「琴乃」

 玲さんが私を後ろから抱きしめた。まだなんとなく香水の匂いがするような……。

「まだ香水の匂いがついてますね」

「だから、代わりに琴乃の匂いをつけにきた」

 私の首筋に顔を近づけ、ジュっと音を立てて吸い付くようにキスをした。

「あ……」

「僕には最愛の女性がいて、結婚予定と言ってある。君がいないパーティーは地獄だ」

「玲さんの周りを女優さんが囲んでいたんでしょ?抱きついてキスされたの?イギリスで前そういうことがあったって言ってたわよね」

 私は声が震えた。我慢できなかった。目を閉じた。

「琴乃、もしかして嫉妬してくれてるのか?」

 玲さんは私の前に来て顔を覗き込んだ。目が輝いている。信じられない。

「いつも不機嫌そうにしているだけで、口に出さなかったじゃないか。なんだか嬉しいな」

「玲さん……私……もう我慢したくない。あなたとすぐにでも結婚したい」

「琴乃……!」

 玲さんは私をすごい勢いで抱き寄せると噛みつくようなキスをしかけた。

「……んう……あ……」

「今日は地獄だったけど、耐えたかいがあった。独占欲を見せてくれて嬉しいよ」

「ずっと昔から日奈さんにも嫉妬していたわ……言わなかっただけ……」

「明日君の誕生日に合わせて内緒で準備していたんだけど……」
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