彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
『ちょっと失礼します』

 私は料理を椅子の上において立ち上がり、一歩前に出た。すると、少し前にいた金髪の男性がとおせんぼうをするように私の前に立った。

『どこに行くの?一緒に行くよ』

 隣にいた二人の男性も立ち上がって私を囲んだ。どうしよう。身動きがとれなくなった。

『失礼』

 腕をギュッと引かれて、そのまま身体ごと誰かにぶつかった。するとその腕で身体を抱きしめられた。顔をあげるとそこには藤堂さんがいた。

『……えっ』

『悪いね、彼女は僕の連れなんだ』

 彼が私を引き寄せると、顔を近づけて英語で言った。わざと彼らにわかるように話しているんだと分かった。

『嘘つくなよ、藤堂。彼女は今日ひとりだって言ってたし、見たことのない子だ。お前こそ、さっきまで彼女達をひとりじめしていたくせに……』

『そうだぞ、なんでも自分のものにしようなんて許せない』

 ここは彼の芝居を受け入れて続けた方がよさそうだと思った。私は藤堂さんの腕にそっと手をやり、笑顔を見せた。

『玲さん、やっと私の所へ戻ってきたのね。それなら許してあげるわ』

『ありがとう、()()

 彼に名前を呼ばれたのが初めてでびっくりした。彼はそのまま私の手を取り唇を近づけた。恥ずかしくて顔が熱くなった。

 でも彼の唇はつかなかった。ぎりぎりのところで止まり、彼は隣で茫然としている男性達をチロリと見た。

『なんなんだよ……それなら玲は他の女の子には絶対手を出すなよ』

『僕は君らと違って、近寄ってきた女性に手なんて一度も出したことないよ』

 彼らは両手をあげて何か早口で言うと、踵を返していなくなった。

「あの……助けて下さりありがとうございました」
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