彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「藤堂君なら琴乃ちゃんを任せても大丈夫そうだな。くれぐれも大切にしてくれよ。僕の亡き親友のお嬢さんなんだ」

「わかりました。すみませんが、僕からもハロルドと留美さんへよろしくお伝えください」

 二人の周りは写真を撮る順番待ちの長い列ができていた。これじゃ挨拶も無理そうだ。

「わかった。伝えておくよ。琴乃さん、今度日本に行くときは必ず事前に連絡する。君のお父さんの墓参りをするから、お母さんによろしくお伝えください」

「わかりました。ご連絡お待ちしています」

 藤堂さんとふたりで先に出た。

 彼は私の少し前を歩いていたが、急に止まった。

 私はドレスのすそを持って歩いていたので、彼にぶつかってしまった。

「ごめんなさい」

 彼は振り向いて私を抱き留めた。

「大丈夫か?ごめん、とりあえずタクシー乗り場を探していて、どうやらあっちだな。ここを右に曲がるんだ」

 私は何も考えず彼についてきていたので、ようやく目をあげて周りを見た。

「そうなんですね……」

「ほら」

 彼が腕を出した。私は彼の顔を見た。

「つかまって。ドレスのすそを持ち上げて歩くんだとそのほうが転ばないだろう」

 私は恐る恐る彼の腕に手をかけた。すると、彼は私の手を引っ張って腕の中へ入れた。

「これでよし。さて行くぞ」

 お互い着飾っている。まるでパーティーでエスコートされているみたいだ。ちょっと恥ずかしかった。

 少し彼の香水の香りがする。さわやかな緑の香りだった。

 タクシー乗り場につくと、彼は携帯で呼び出していた。
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