彼女はエリート外交官の求愛から逃れられない
「もう、藤堂さんったら変なこと言わないで!」

 彼は笑いながら歩いていく。そんなときも彼は私の手をぎゅっと握ってくれていた。

 きっとどこから見ても仲のいいカップルにしか見えないだろう。ただの知り合いなのに……。

「イギリスの歴史に詳しいともっと興味深く見られるのかもしれませんね」

「まあ、そうだろうね」

 広い中庭に出てほっと一息ついた。

「なんだかロイヤルウエディングを思い出しました。素敵でしたよね」

「そうだね。この寺院の荘厳さがどんな式も特別にしてしまう。蔵原さんは結婚式をするなら教会がいいの?」

「特に決めてません。でもこういうのを見ると教会がいいかなと思ってしまいますね……藤堂さんこそ、どこでやりたいとか希望があるんですか?」

「僕は特にないよ。彼女の考えに合わせる。そういうのって新婦が決めるっていうじゃないか」

「そうなんですか?二人の結婚式だから、私なら彼の考えを聞きたいです。藤堂さんは彼女からあなたに合わせるって言われたらどうするんですか?」

 彼は突然止まった。手を繋いでいた私はすでに右足を前に出していた。後ろに引っ張られ倒れかけた。すると長い腕が私を抱き寄せた。

「あ……」

「そんなふうに言ってくれたら僕は嬉しくてこうしてしまうかもな」

 ぎゅっと抱きしめられた。

「え?あの……」

 ふっと解放された。

「ごめん、つい……」

「あ、いいえ……」

 お互い赤くなって、そのままハロッズへ移動した。そこでアフタヌーンティーを楽しんでいた時だった。
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